札幌での陸水学会からバルセロナでのSAME18に参加し、帰国翌日に授業、その翌日から2泊3日で芦ノ湖を調査し、京都に戻って締切の山と戦ったあと韓国微生物学会での招待講演、という狂ったスケジュールをこなした。あまりにも忙しくブログを書く暇がなくて、色々ありすぎてとても全部書ききれないので簡単に振り返る。

まずは北海道大学で行われた陸水学会。この学会には学部生時代からお世話になっていて知り合いも多く、久しぶりに会う人もたくさんいて、会場でも常に誰かと近況報告をしあっているような感じで楽しかった。また今回は陸水物理学会のセッションがあって、調査でお世話になっている人の発表もあったので参加してみたのだけど、意外とまだ分かってないことが多くてまだまだ新しい発見もあって、なかなか面白かった。水文学っぽい研究は自分は結構好きかもしれない。今後微生物の研究と結び付けるような展開がありそうなら是非挑戦してみたいと思った。
残念だったのが、このあとのスペインの学会と日程が一部被ってしまったことだ。今回は陸水学会にギリギリまで参加するため、北海道から直接香港に飛んで、そこからバルセロナに向かうという強行スケジュールを組んだ。自分の発表はポスターだったのだけど、コアタイムで30分だけポスターの前で発表した後、急いで会場を後にし、初めての新千歳空港国際線ターミナルへ向かう。ターミナルには日本人はほとんどおらず、9割以上が北海道に旅行に来た海外の人たちだった。そこから香港、香港からバルセロナは予定通り。空港からホテルまでも、前回のスペイン出張のようなトラブルなく順調にたどり着いて、一休みしてから夕方からの学会のレセプションに参加。

2年前ののエストニア大会よりも明らかに人数が多く、会場もギチギチで、臨時でオンライン配信の別部屋が用意されるほどの盛況ぶりだった。会場は海岸沿いの会議場で風光明媚な場所にあった。ここで6日間、朝から晩まで12分ずつトークがびっしり埋まったスケジュール。もう少しポスターの人数を増やしてトークには余裕を持たせた方が良いのでは?とも思ったけど、思っていたよりもみんなちゃんと時間を守って発表してくれたおかげで休憩時間が大幅に削られるような事態にはならず。短時間で効率よくたくさんの話が聞けたのは良かったけど、とても疲れた。

この学会に来るのはヨーロッパの研究者が中心で、共同研究しているチェコやスイスのメンバーと直接話ができたし、知り合いになりたいと思っていたスペインのグループとも色々話ができて、互いのデータが揃ったら共同研究の機会を模索しようという話にもなった。中日の午後は会場で合流した日本人のメンバーと市内をひたすら歩くツアーでサグラダファミリアやグエル公園を見に行った。近くで見るとものすごく細かいところまで凝っていて迫力があった。

自分の発表はまだ未完成の新ネタの発表で大した内容ではなかったのだけど、口頭でやらせてもらえたので、これまでの自分の研究の内容も踏まえた内容にして、存在感をアピールしておいた。この学会も10年前からほぼ毎回参加しているので、「良く分からんけど日本からいつも来て湖の話をしている奴」くらいにはみんなに知ってもらえているのではないかと思う。また共同研究者が琵琶湖の話を結構持ち出してくれたこともあり、"Lake Biwa"はRimov reservoirとかLake ZurichとかLake StechlinとかLake Mendotaみたいに、前置き無くても定番研究フィールドとして通じる場所として認知されつつあると感じた。
そして最終日、なんと自分の研究室の学生が最優秀発表賞をとって、めでたしめでたし!・・・ということで、次の移動日はいつものようにプレ時差適応で朝3時に起きて荷造りをしていたのだけど、そこで携帯が鳴って、なんと飛行機が8時間半遅れという連絡が。航空会社はキャセイパシフィックで、同じ航空連合のフィンエアー経由でヘルシンキ経由の便に変えてもらう手段がありそうな状況。あまりにも前回のスペインで起こったのと同じパターンすぎて、前回を踏襲し、キャセイのライン窓口に連絡を入れつつ、現場での交渉の可能性にかけてまだ真っ暗な街を空港に向けて走った。ところがライン窓口は前回のように返事を返してくれない。調べてみると香港付近の台風が原因で世界中から香港に向かう飛行機が遅延していてカオス状態になっているようで、窓口がオーバーフローしているみたいだ。そうこうしているうちに空港に到着したので、キャセイの窓口が開くのを待って交渉に臨むも「今回は全世界で遅延が発生しているので振替は不可能」という回答。食い下がったけど上の人が出てきて一蹴され試合終了。結局バルセロナ空港で朝から晩まで約12時間過ごし、ようやく飛んだ香港便も遅れに遅れ、香港に着いたところで、そこから翌日早朝の振替便までさらに10時間空港で過ごす羽目に。香港空港は端から端まで歩いて、どこに何があるか大体学習した。その中で良い感じの作業スペースがあったので、夕食後はそこに張り付いて、週末の3連休にちゃんと休める状況を作り出すことを目標にして、ひたすら翌週締め切りの書類を仕上げていた。で、午前2時過ぎにようやく大阪行きの便への搭乗が始まったのだけど、今度は飛行機に乗った後に全然飛ばなくて、またまた遅れに遅れて、日曜の昼には関空に到着していたはずが、結局月曜の昼前の到着になった。スペインを出る3日くらい前から時差ボケプレ適応で睡眠時間を調整していて、機内での睡眠プランも完全に考えてあったのに、ほぼ40時間、週末を全て飛行機か空港で過ごすというカオスに巻き込まれて、全ての計画が破壊されて帰ってきた。
で、翌日は本部キャンパスで授業、でその翌日から芦ノ湖への調査出張というクレイジーなスケジュール。ボロボロの体で何とか90分の授業をこなして、調査準備して、翌日早朝からレンタカーを借りて、高速道路で箱根へ向かう。午後に箱根に到着して、翌日が調査だったのだけど、ここでも台風に邪魔され、朝から爆風で余裕で強風域に入っている状況。ここまで来て引き下がるのはあり得ないので、傭船先の船長に「行けるところまで行ってほしい」とお願いして船を出してもらうも、風向きが悪く、最深部は波が高すぎて危険ということで近づけず。仕方なく少し手前の風裏でほぼ同レベルの水深がある地点で妥協して、そこで何とか調査を開始。

水深40mくらいで、今まで調査した中でも一番浅い湖なので、あっという間に終わるはずだった。が、採水も後半にさしかかったところでトラブル発生。なんと採水器の蓋を閉めるための紐が切れてしまった。「こんなこともあろうかと」と予備パーツの袋をガサガサするも、ちょうど予備を持ち合わせていない場所が切れてしまっていることに気づく。詰んだかと思ったけど、船上にあるクーラーにかかっていた荷札の紐と、偶然予備で持ってきていた錘に付属していたカラビナを使って応急処置をして、何とか調査再開。これで蓋が閉まった時は本当に安堵した。

時差ボケと荒波の中で修復作業をしていたせいで一気に船酔いしてしまって、吐き気をこらえつつなんとか取りたい水を全部取って帰還。楽チンな調査だったはずが、なかなか過酷な内容になってしまって、池田湖同様、終わった後は放心状態になった。

あとはいつものように宿(コテージ)に戻り、そこに濾過機材を展開して濾過を開始。こちらはトラブルなく順調に終わって、翌日は荷造りしつつ、大涌谷を見学して帰った。どこもすごい人で、しかも平日だったからか、京都以上に外国人観光客だらけで、途中で入ったコンビニではほぼ全員外国人で自分も英語で接客されるありさまだった。

京都まで運転して戻ってきて、一息・・・と思いきや、この3週間オフィスを離れていたツケで、裏で溜まっていた締切たちが山のように待っている。ただ「3連休は仕事しちゃダメだ」という気持ちで、香港空港で結構頑張ったおかげで、週末はほぼ仕事せずに家族と過ごすことができた。で、翌週。初日はメールを返して、やることを整理してメモに書きだすだけで1日が終わるくらい仕事が溜まっていた。その週は長期不在で先送りにしていた打合せやイベントがびっしり入っていて、その合間に挟まってくる締切に間に合わせて作業をし続ける日々。それに追われていたら昼も夜も関係なく一瞬で終わって記憶があんまりない。
でその翌週は、ようやく、ほぼ1か月ぶりに1日オフィスにいられる日々がやってきて、メモに書きだして先送りにしてきたタスクを1つずつ潰して消していく日々。本当にいろんな種類の仕事があって、書きだした仕事を眺めるだけでも、研究室関係、学会関係、査読関係、調査関係、報告書関係、申請書関係、共同研究関係(国内・海外)、人事関係、施設関係、広報関係、保険関係、学生関係、授業関係、コンプラ関係など、本当に種類が多い。よく研究環境改善施策のアンケートで「どの仕事が忙しくて時間をとられていますか」というのを聞いてくることがあるけど、何かが特別忙しくてそれを減らせばよいという状況ではなくて、この「あまりにもいろんな種類のことを教員がやらなければならない」という状況そのものを改善しないと難しいよな、といつも思う。
メモに書きだしたタスクが半分くらい片付いたところで、今度は韓国出張。新千歳に続いて、神戸空港の国際線ターミナルを使うというレアな経験をした。新しいけど本当に小さいターミナルで、拡張する気は全然ないんだなというのが分かった。出入国審査も税関も電子化されてなくて、久しぶりに日本のスタンプをパスポートにもらった。

今回はスウォンで開かれた韓国微生物学会(MSK2025)に招待講演で参加した。昨年以来の韓国だけど、近いし時差無いし、文化的にも違和感が少ないしで、行きやすい海外だ。一方で今回も感じたのが、街中はとにかくタワマンだらけで、あちこちにコンビニがあって、道路は片側4車線も5車線あって、たくさんの人が快適に住めるようにすることに最適化された街だなあということだ。この点はごちゃごちゃしてて道も狭い日本とは全然違う。

今回も前回同様、インハ大学のCho教授の招待で、研究室のメンバーや、その周辺のメンバーとの交流で毎晩美味しい食事を食べさせてもらって最高だった。名前は知っていたけど会ったことが無かった研究者にも会えたし、飲み会で初めて知り合った韓国の方とも仲良くなれたので良かった。印象に残ったのが、学生がとても礼儀正しくて気が利くということだ。まめに挨拶してくれて、こちらの導線や食事を気にかけて先回りして動いてくれるし、食事が終わりに近づくとサクサクと会計を進めてくれて、2次会の参加人数を把握して予約を入れてくれて、シームレスに次の店を案内してくれた。自分が学生の頃もこれくらいは当たり前にやっていたと思っているけど、今の日本ではこういうのほぼ無くなったなーと思う(老害)。気を遣う方は疲れてしまうのではないかと少し申し訳なくなったけど、とてもありがたく感心したので、自分自身も礼儀正しくふるまうことの重要性を再認識した。

会議は結構立派なコンベンションセンターでの開催で、あちこちに立派なパネルが立っていて、運営の人員もたくさんいたし、専属カメラマンもいたし、スポンサー企業の数もブースの大きさも日本よりも全然大きいしで、かなり金がかかっている感じの学会だった。企業ブースを全部回ると景品がもらえるとかで、企業の人たちが学生の相手でずっと忙しそうだったのが日本と全然違うなと思った。半分以上の発表が韓国語(スライドやポスターは全部英語)で、日本で行われる学会に参加する留学生の気持ちを味わうことができた。韓国の微生物研究の雰囲気を現場でつかめてとても良い機会になった。


で、1カ月以上の出張ラッシュを終えて、ようやく夜にブログを書けるくらいの時間ができて、今これを書いている。まだまだタスクメモは半分以上残っているし、来週も3件ほど大きめの締切があるし、この1カ月ほとんど論文をチェックできてなくて「後で読む」リストが今までにない程に膨れ上がっているし、再来週にようやく「夏休み」がとれてそこはちゃんと休まないといけないと思っているので、自分の「本当の仕事」に手を付けられる日はまだまだ先になりそうだ。












