yokaのblog

京都大学で湖の微生物の研究してます

琵琶湖24時間調査(未遂)

 2022年に引き続き、チェコのMichaela Salcher博士らの研究グループが調査のため来日していた。今回は微生物の遺伝子発現の日周変化を調べたいということで、24時間連続での調査を企画。まだ計画が申請段階だった2年前から話を進めていたものだけど、色々と例外的な調査ということで、最後の2か月ほどは労務や安全面でクリアすべき課題を洗い出して、それを満たすために協力してくれる方を探して奔走し、事務的にもかなり大変だったし、本当に多くの方の力を借りて、何とか実施可能なところまで持ってきた。悪天に備え、予備日もたっぷりと1週間準備し、あとはMichiらの来日を待つだけ・・・だった。が、台風と前線が1週間居座り続けるという最悪の想定を超えた状況となり、予備日をすべて使っても夜間調査が可能な安定した天候に巡り合うことができなかった。

 最終的に早朝から日没までの約10時間の連続調査に大幅短縮し、その代わり採水頻度を極限まで高めるという形で準備していたタイムシリーズサンプルのスロットを使うことになった。それでもギリギリの状況での調査で、名古屋を直撃している線状降水帯におびえながら、何度も強雨に降られながらも、運よく雷雲が来る前に夕刻を迎え、なんとか日没まで調査をやらせてもらえた。

 2022年の調査では2発の台風にやられながらも予定通りの調査ができたので、今回も「最後は何とかなる」と思いながら1週間天気予報を眺め続ける日を過ごしたのだけど、何とかならなかった。おかげで、天気予報がどれくらい会社によって違うかとか、どれくらい変わるのかとか(意外とシレっと直前に大きく変わったりしている)、どういう状況で予報が難しいのかとか、色々と詳しくなった。

 ものすごい時間を使って、ものすごく色々な人に協力してもらって、わざわざ海外から来てもらう中、万難を排してこの1週間に賭けていただけに、今回の結果は本当に残念で仕方がない。表向きにはお互い「できる中では最大限の調査ができた」という形で納得をしているけど、本心はとても悔しいし、多分向こうも同じだと思う。次回からはもっとスムーズに企画できるはずなので、今回得られたノウハウと教訓を糧に、必ず同様の調査に再チャレンジしたいと思う。

 帰路へ向かうMichiらと別れ、松本で行われていた陸水学会に参加して昨日帰ってきた。今週は地球化学会と科研費締め切り、月末は微生態学会、その翌週は調査ということで、しばらくドタバタの日が続く。

ISME20@オークランド

 ニュージーランドのオークランドで開催された国際微生物生態学会(ISME20)に行ってきた。前回(2年前)の南アフリカはスキップしたので、2022年のローザンヌ以来のISMEだ。今回は淡水セッションでの招待講演で、参加費(なんと12万円!)免除かつ、発表も30分という厚遇。思いっきり話したいことを話せたし、雑談を織り交ぜる余裕もあって、楽しく講演できた。特に最初に掴みで入れた、「ニュージーランドと日本の共通点」というスライドは結構受けたみたいで、最後の火山が多いという共通点から日本の大水深湖の話に繋げられたのはなかなかうまくいったと思う。

 もう4回目のISMEで、まともに全部参加したら情報量と会話量が多すぎてとてつもなく疲れることは分かっていたので、初日から飛ばしすぎないで、知り合い作ったり議論したりする時間とひっそりポスターを回る時間、遅くまで飲みに行く夜とさっさとホテルに戻って休息する夜のメリハリをつけて、最後まで体調を崩すことなく乗り切った。ISMEに出てくるメンツや研究のジャンルもだいたい分かってきているので、前みたいにポスターを全部消化しようとして疲弊したりすることもなく、自分に関係の深い発表を逃さず効率よく回るのも以前よりもだいぶ上手くなった。このあたりは学会慣れしてきて楽になったなと思う。

会ってみたかった中国・ニュージーランド・アメリカの研究者とも話ができたし、すでに顔見知りのチェコや韓国のメンバーとも議論できたし、日本に来たいという学生とも今後の可能性について打ち合わせができたのは良かった。一方で今回話を聞きたかった何名かの研究者は自分の発表と並行して行われる別セッションで発表をしていて話を聞きに行くことができなかった。その後会場で見かけたのだけど、ガツガツ話しかけに行くまでもないかな・・・と思って遠慮してしまったのだけど、後になって思えば、1年に1回も直接会って話すチャンスはないわけで、思い切って行けば良かったなと少し後悔している。学生だった頃は無邪気に「論文読んでるよ!」みたいな感じで話しかけに行けたのだけど、中途半端に立場が上がってしまったので、それなりに目的や内容がないと話しかけづらいという気持ちもハードルになっている気がする。考えすぎかもしれないけど。

 2日目の懇親会は恒例の爆音ダンスパーティー。自分はあまり好きではないので、いつものように会話のできる静かな場所を見つけて、同じような人たちとひっそりと食事を楽しんでいた。翌日は中日でエクスカーションで、今回はレンタカーで南のロトルア方面に行くという日本のメンバーに同行させてもらい、湖や火山や温泉を見て回った。

↑人生の最南記録を更新した場所で撮った一枚。この後の人生でこれを更新することはあるかな、と思いながらこの場を後にした。

 灼熱の京都からは30度近く低く、避暑のつもりでいたら、思っていたよりも寒かった。気温だけ見ると朝に一桁後半くらいの温度なので、日本の晩秋くらいかなーと思っていたのだけど、風が強くて真冬の寒さで、結局、緊急用のつもりで持ってきていた折り畳みのダウンジャケットを常に着ていた。今回はケアンズに引き続いて2回目の南半球訪問だけど、ケアンズは緯度が低くて7月で冬の沖縄くらいな感じだったので、今回は初めて本格的に季節が逆転する感覚を経験して面白かった。気温だけではなく、植物とか太陽の感じも真冬だし、遠くには真っ白な雪山も見えるし、「あれ今何月だっけ?」と分からなくなることが何度もあった。

 あと面白かったのは、人種や食事がかなり多様だったことだ。白人だけでなくマオリ系や東アジア・南アジア系の人もかなりの割合でいるし、食事も結局毎日のように何かしらアジア料理を食べていた気がする。ケアンズでもそうだったけど、普通にご飯にも麺にもありつけて、普通においしいので、ヨーロッパみたいに食べ物で困ることはなかった。結局アジア料理ってどこ行っても人気なんだなと思った。寿司も人気らしくあちこちに売っていて、マヨとソースだらけの邪道進化した海外寿司を楽しんだ。スパイシーチキンイナリとか、まずくはないけど、全くシナジーを感じない組み合わせで面白かった。

 フライトは大阪からの直行便がなくてメルボルン経由で、結局行きも帰りも全体で17時間くらいかかって、実は直行便でヨーロッパに行くよりも時間がかかる。けど、時差が3時間しかないので全く苦しむことなく適応できるのがとてもよい。あとは当たり前だけど、オーストラリアと同じ感想で、町中の標識やレストランのメニューが読めるのでうれしい。オークランドはヨーロッパみたいに景観のある旧市街がある感じではなく、普通に日本みたいに高層ビルが建っている都市なので、海沿いの雰囲気は横浜とか神戸に似ていて、良くも悪くも違和感ほぼなしで適応できてしまう感じがあった。

 物価もそこまで高くなく、外食は日本の倍くらいするけど、ホテルとかはオフシーズンだったこともあってか部屋の広さから考えたら日本よりも安く感じた。左側通行で普通に運転できるし、季節が逆転する感じも楽しい。今度は南島の氷河などを目当てにまた来てみたいなと思った。

音声入力で脳をイジめている

 最近の音声入力技術の向上があまりにすごすぎて、文章執筆作業に革命が起こりつつある。ちょっと前の音声入力ツールは、入力した音声を逐語的に反映・漢字変換していたため、誤認識や誤変換が多いし、句読点の位置はめちゃくちゃだし、「えっとー」みたいなのも入ってくるしで、「結局自分で打ち込んだ方が早い」現象が起こっていた。ところが今はAI技術で、長い文章の前後の文脈や声のトーンも考慮しながら一定単位の入力を一括で出力するということが可能になって、漢字変換の精度が向上したのみならず、言い間違いや言い淀みを自動で除去してくれるし、句読点も正確に打ってくれる。この精度が本当にすごくて、言いたかったことがそのまま修正不要なレベルの文章で出てくる。 ちなみに、これまで試したツールの中では、現時点ではGeminiの音声入力が気に入っている。

 さらにすごいのが、大きな声を出しづらい環境にいるときにヒソヒソ声で入力してもほぼ正確に聞き取ってくれるということだ。これは最初に試したときに本当に感動した。さらに、英語も正確に聞き取ってくれる。面白いのが、かつての音声入力ではきちんと認識してくれなかったような雑な発音でも、ほぼ正確に自分が言いたかった英文を打ち込んでくれることだ。これはまさに人間が、発音の悪い相手の英語を前後の文脈から補完してきちんと察してくれるのと同じように、AIが前後の文脈から意味を察して単語起こしをしてくれるから実現している。「機械に認識してもらえるなら、人間相手にも通じるレベルの発音ができているはず」と確認できる点もよい。外国語の学習に自信をもって取り組むうえでも使えそうな機能だと思う。

 最近これを知ってから、ちょっと長い文章を書くことになったら、すぐに音声入力に切り替えるようになった。音声入力はキーボード入力の3倍の速度で文字入力できるそうで、一度慣れてしまうとキーボードがかったるすぎてもとに戻れないくらい、スピードの差がある。面白いのが、実際に使ってみると「文章を執筆する」という同じ作業なのに、キーボードを打つ時とは脳の使い方が全然違っていて、色々と気が付くことがある点だ。

 まず実際に音声入力をしてみるとすぐに実感するのが、話すのと同じスピードで口語ではない文章を考えるというのは実際にはかなり大変だということだ。キーボードで書いていた時は、キーボードを打つ操作が速度のボトルネックになっていたおかげで、思考の遅さが可視化されていなかったのが、その制約がなくなったことで、脳の思考速度がアウトプット速度としてダイレクトに反映されるようになる。脳のキャパをフルに使えているという点で効率は良いのだけど、その分負荷も高くて、キーボードの時よりも遥かにストイックに文章を書くことに頭を集中させなければならない。なので、実際入力する時は、目を閉じて視覚情報を遮断して、脳のリソースを文章を生み出すことに100%投資している状態で、パソコンの前で目を瞑ってペラペラ喋っている状態になっている。 

 もう一つ気が付いたのが、キーボードが律速になっていたときは、手よりも脳のほうが速くて、書きたいことが頭の中に溜まるので、出力をある程度頭の中でバッファしてから、それをチャンクとして打ち込んでいたのだということだ。そのおかげで、前後の文脈を多少考慮に入れながら文章案を修正しながら出力するというのが自然にできて、文章の破綻が起こりにくい。対して、音声入力をするときは、下流のボトルネックがなくなって、脳から出たものがどこにも溜まらずにどんどん口から外に出ていくので、チャンクを作る場所がなく、常に前後の文脈を意識し続け、脳から出す段階で文章を完成させておかなければならない。これがかなり負荷が高くて、話している途中でちょっと集中が切れるとすぐに文章が破綻して途中で言い直しになってしまう(言い直しになっても結構な精度でそれを認識して自動で修正してくれるのもまたすごい)。キーボードがボトルネックになっていたおかげで頭の中にバッファーができて、そのおかげで簡単に文章が書けていたのだということを発見できた。 

 今書いているこの文章自体、ほとんど音声で入力しているけれど、手打ちで書いていた時とは想像がつかないくらいの爆速で入力ができていて、体感的には1/3くらいの時間しかかかっていない。キーボードで打つ時よりも出てくる文章が雑なので推敲に余計に時間がかかることを踏まえても、全部キーボードで作業するときに比べて半分くらいの時間で文章が完成する。このスピードに慣れてしまうと、もうキーボードに戻ることはできない。ただし、脳の負荷は本当に高くて疲れる。単にまだ慣れていないだけで、これから慣れて脳が最適解を見つけてくれれば、もっと楽になるのではないかと期待している。 あとはやっぱり音声入力はちょっと恥ずかしい。ヒソヒソ声でも十分使えるとは言っても、デスクでフル集中で目を閉じてモニターの前でぼそぼそやっているというのは、みんなが静かにキーボードをカタカタやっている環境の中では気味が悪い。家でも自分の部屋で目を閉じてキーボードの前でぼそぼそやっているのを家族に見られるのは少し気まずい。間違いなくこのテクノロジーは一般化していくはずなので、いずれ音声入力が当たり前になってオフィスでみんながモニターの前で目を閉じてぼそぼそやるような時代になるか、何か公共の場でも音声入力ができるような物理ツールが開発されることを期待したい。

網走湖調査

今年度から国環研の田辺さん代表の基盤Bプロジェクトの分担に入れていただき、汽水湖に出現するラン藻類の塩分耐性遺伝子の進化的背景にメタゲノム解析から迫るという役割で共同研究を始めている。今回はその調査の第一弾で、網走湖にサンプリングに行ってきた。

 まずは調査前日に湖岸散策。実は昨年の摩周湖の調査でもこの湖岸には来ていたのだけど、今回は船で沖に出ての調査となる。夜は地元の居酒屋でニシンの刺身の美味しさに感動しつつ、翌日の調査の成功を祈念して寝床につく。で翌朝、起きてふとメールを確認すると、先月投稿した論文のリジェクトメールを発見し、寝起きから最悪の気分に。せめて翌日にしてほしかったと思いながらなんとか気持ちを切り替え港へ向かう。今回は漁協の方に協力をいただいて船を出してもらう段取りだ。

これまで日本中の湖で調査を行ってきたけど、深い湖ばかりターゲットにしてきたので、「浅い湖」「富栄養湖」「汽水湖」のいずれも初めて。最大水深は16m程度なので、CTDや採水器の上げ下げも楽々で、深い湖だと1キャストに15分とかかかるので、船上作業時間に制約がかかるし失敗できなくて緊張するのだけど、この浅さだとロープの上げ下げの時間は無視できるほど短く、ほとんどの時間を船上作業に使えるし、やり直しもすぐできるので気楽だった。水深は浅いのだけど、水柱の構造はかなり複雑で、CTDデータを見ると、水温・塩分・酸素とも、水深ごとに上がったり下がったり激しい結果。海水由来の水と河川由来の水が入り組んでいて、湖底付近で硫化水素臭がするほど嫌気なところもあれば、海水の供給があってむしろ湖底のほうが好気的になっている場所もあったりで、湖底地形や海からの距離に応じて、水平方向にもかなり環境の多様性がありそうな感じだった。

 水が濃いので採水量も普段の貧栄養湖の1/5ほどに抑えて、どんどん調査が進む。完全に凪で湖面が鏡面のようになっていて、揺れや風に邪魔されることも全くなく、暑くも寒くもなく、北海道の広々した雰囲気を味わいながら気持ちの良い調査。船上でも時々リジェクトのことを思い出してしまうのだけが余計すぎた。

想像していたよりも湖のサイズは大きかったのだけど、船の足が速かったこともあり、複数ポイントの採水だったにもかかわらず2時間足らずで調査終了。普段やってる深い湖の調査って大変だったんだな・・・と改めて感じるきっかけになった。

 その後ホテルに戻って部屋で濾過作業。最近は学生も連れて複数人で作業を分担するのが定番になっていたので、久しぶりに単独での処理で、かつてのように深夜戦を覚悟していたのだけど、水が富栄養だったり嫌気だったりですぐフィルターが詰まることもあって待ち時間がなくサクサク進んで、荷造りを前倒しで済ませて、夕食を食べに出かけるほどの余裕だった。それにしても18時に網走で出した荷物が翌々日の午前に京都につくのってどうやっているんだろうか。船便のはずなので当日23時過ぎの苫小牧発のフェリーに間に合わせているということだろうか。距離的に無理ではないけど、かなりギリギリだ。ヤマト運輸さんにはいつも本当に助けられている。

 今回のサンプルの解析の結果次第だけど、来年以降も網走湖には来る可能性があって、今後は別の汽水湖も調査する可能性もある。湖調査の経験が一気に広がった面白い調査になった。

2026年7月琵琶湖調査

先週、東京から来られた共同研究者ご一行と琵琶湖に行ってきた。やや風があったけど暑くも寒くもなく快適な調査。今年は6月が体感的にも涼しかったけど、表層水温もまだ23℃。調べてみると、昨年のこの時期には27℃まで上がっていたので、水温で見ても相当な差が出ている。

新しい船での調査は2回目。まだピカピカの船室は前の船よりも広々としていてとても快適。琵琶湖は沖でも普通に電波が届くので問題なく仕事できます(新幹線より全然できます)。

今回は自分のサンプルは余り採らなかったけど、ちょっと培養周りで試したいことがあり、新しく導入したマルチウェルピペットで16サンプルずつ96ウェルプレートに段階希釈するというのをやってみた。分注もピペッティングでの混合も最初にプログラムを組んでしまえば自動でやってくれて大変便利。

久しぶりに顕微鏡観察もしてみたけど、C字型のCL500-11細菌が大量にいた。分裂中の細胞もたくさんいた。やはりこの時期が一番増える時期みたいだ。自分を研究の道に導いてくれたCL500-11細菌。出会ってから15年以上経つけど、変わらずそこにいるのに、変わらず培養できないし、変わらずよく分かっていないし、変わらずかわいい。これからも追いかけます。

歳をとると感情は減るのか増えるのか

  1. 感情的なのは幼くて良くないことである
  2. 感情は、理解と現実の間のギャップに説明がつけられないときに発生する
  3. 歳をとると、知識や経験の蓄積によって「説明できること」が増える
  4. だから歳をとると、理解と現実の間にギャップがあっても、それに自分の頭の中で説明をつけて納得することで自己消化ができることが増える
  5. なので歳をとるとどんどん感情的になることは減っていく
  6. そうなると、精神的に安定して、悩みや苦しみや争いは減る。一方で、感情から得られる刺激や成長も減ってしまって寂しい
  7. でもこれが残念ながら歳をとるということなんだろう

20代後半くらいから、ずっと↑このように考えていたのだけど、最近↓このようなロジックもあるなということを思うようになった。

  1. 全く同じモノを見聞きしても、人によって捉え方は異なる
  2. 捉え方の違いは、見聞きしたモノに説明をつけるための経験や知識の違いで生じる
  3. だから歳をとると、経験や知識の蓄積によって、同じモノを見聞きしても、より高解像度で捉え、より多くの情報が得られるようになる
  4. なので歳をとると「今まで気付かなかったこと」にどんどん気が付くようになる
  5. 新しく気が付くものには、自分の経験や知識で説明できないものも含まれている
  6. 説明できないとき、そこに理解と現実のギャップが生まれ、感情が生じる
  7. なので歳をとっても、感情的になれる機会はまだたくさんある

ただし後者のロジックが成り立つのは、

歳をとって蓄積される経験や知識を、理解と現実のギャップを埋める説明に使うだけではなく、理解を超えた現実を捉えるために積極活用する

というのが実践できている場合に限る。

 子供が、自分がもう意識しなくなっている身近で些細な出来事に新鮮な気持ちで向き合っているのを見ると、「人生に慣れて感情が減る」効果を実感する。一方で、子供が気にも留めない一瞬の出来事に、自分の経験や知識が突然結びついて嬉しくなったり腹が立ったりすることもあって「解像度が上がって感情が生まれる」効果を実感する。自分は「人生ではできるだけ多くのことを考えたり経験したりしたい」「知らなくて良いことなどないはずだ」という思想で生きているので、知識や経験の蓄積を肯定しつつも、「歳をとると感情が減ってつまらなくなる」という不安を解消するこのロジックは心地が良い。ぜひ実践して確度を高めていきたい。

2026年5月 琵琶湖調査

昨日、新「はす」号になってから初めての琵琶湖調査に行ってきた。新船デビューにふさわしい好天・無風の調査日和だった(毎年この時期は桟橋のイネ科花粉がすごすぎて呼吸困難になるのを除けば)。

ひとまわり大きくなった船、造船所で見たときは前の船から大きく変わったような印象だったけど、実際に乗ってみると、思ったよりも違和感が無くて、いつもの感じで調査ができた。作業スペースの形状がかなり変わったので、ここは慣れが必要だと思うけど、大きくなって揺れにくくなってスピードも上がったし、何よりもキャビンが広くて空調付きで、より快適に調査ができそうだ。色々と機材も一新されていて、湖の調査船としてはかなり大規模なものや先端的な装備もついているので、今回は単なる採水だけだったけど、いずれは「この船でしかできない調査」もできると良いなと思う。

湖はものすごく穏やかだったのだけど、アンカーを打っているのにものすごい速さで水が南に向かって流れていて、こんなのは見たことが無かったのでびっくりした。前日の強い南風で北に吹き寄せられた水が戻っているのだろう。そのうち「琵琶湖の北端と南端でゲノム解像度で微生物集団の違いが見られるのか」というを検証してみたいなと思っていたのだけど、これだけ速く水が動くなら、微生物は水平方向にはかなり混ざっていてあんまり差はないのかも、と思ったりした。一方で湖なのに海の潮目みたいになっている場所もあったりして、プランクトンとか魚の集まり方は水平方向に結構ばらつきがありそうだと思った。やっぱ陸水物理っぽい話は結構好きかもしれない。最近色々とうまく行かないことが多くて疲れていたので、久しぶりの調査でとても癒された。