yokaのblog

京都大学で湖の微生物の研究してます

音声入力で脳をイジめている

 最近の音声入力技術の向上があまりにすごすぎて、文章執筆作業に革命が起こりつつある。ちょっと前の音声入力ツールは、入力した音声を逐語的に反映・漢字変換していたため、誤認識や誤変換が多いし、句読点の位置はめちゃくちゃだし、「えっとー」みたいなのも入ってくるしで、「結局自分で打ち込んだ方が早い」現象が起こっていた。ところが今はAI技術で、長い文章の前後の文脈や声のトーンも考慮しながら一定単位の入力を一括で出力するということが可能になって、漢字変換の精度が向上したのみならず、言い間違いや言い淀みを自動で除去してくれるし、句読点も正確に打ってくれる。この精度が本当にすごくて、言いたかったことがそのまま修正不要なレベルの文章で出てくる。 ちなみに、これまで試したツールの中では、現時点ではGeminiの音声入力が気に入っている。

 さらにすごいのが、大きな声を出しづらい環境にいるときにヒソヒソ声で入力してもほぼ正確に聞き取ってくれるということだ。これは最初に試したときに本当に感動した。さらに、英語も正確に聞き取ってくれる。面白いのが、かつての音声入力ではきちんと認識してくれなかったような雑な発音でも、ほぼ正確に自分が言いたかった英文を打ち込んでくれることだ。これはまさに人間が、発音の悪い相手の英語を前後の文脈から補完してきちんと察してくれるのと同じように、AIが前後の文脈から意味を察して単語起こしをしてくれるから実現している。「機械に認識してもらえるなら、人間相手にも通じるレベルの発音ができているはず」と確認できる点もよい。外国語の学習に自信をもって取り組むうえでも使えそうな機能だと思う。

 最近これを知ってから、ちょっと長い文章を書くことになったら、すぐに音声入力に切り替えるようになった。音声入力はキーボード入力の3倍の速度で文字入力できるそうで、一度慣れてしまうとキーボードがかったるすぎてもとに戻れないくらい、スピードの差がある。面白いのが、実際に使ってみると「文章を執筆する」という同じ作業なのに、キーボードを打つ時とは脳の使い方が全然違っていて、色々と気が付くことがある点だ。

 まず実際に音声入力をしてみるとすぐに実感するのが、話すのと同じスピードで口語ではない文章を考えるというのは実際にはかなり大変だということだ。キーボードで書いていた時は、キーボードを打つ操作が速度のボトルネックになっていたおかげで、思考の遅さが可視化されていなかったのが、その制約がなくなったことで、脳の思考速度がアウトプット速度としてダイレクトに反映されるようになる。脳のキャパをフルに使えているという点で効率は良いのだけど、その分負荷も高くて、キーボードの時よりも遥かにストイックに文章を書くことに頭を集中させなければならない。なので、実際入力する時は、目を閉じて視覚情報を遮断して、脳のリソースを文章を生み出すことに100%投資している状態で、パソコンの前で目を瞑ってペラペラ喋っている状態になっている。 

 もう一つ気が付いたのが、キーボードが律速になっていたときは、手よりも脳のほうが速くて、書きたいことが頭の中に溜まるので、出力をある程度頭の中でバッファしてから、それをチャンクとして打ち込んでいたのだということだ。そのおかげで、前後の文脈を多少考慮に入れながら文章案を修正しながら出力するというのが自然にできて、文章の破綻が起こりにくい。対して、音声入力をするときは、下流のボトルネックがなくなって、脳から出たものがどこにも溜まらずにどんどん口から外に出ていくので、チャンクを作る場所がなく、常に前後の文脈を意識し続け、脳から出す段階で文章を完成させておかなければならない。これがかなり負荷が高くて、話している途中でちょっと集中が切れるとすぐに文章が破綻して途中で言い直しになってしまう(言い直しになっても結構な精度でそれを認識して自動で修正してくれるのもまたすごい)。キーボードがボトルネックになっていたおかげで頭の中にバッファーができて、そのおかげで簡単に文章が書けていたのだということを発見できた。 

 今書いているこの文章自体、ほとんど音声で入力しているけれど、手打ちで書いていた時とは想像がつかないくらいの爆速で入力ができていて、体感的には1/3くらいの時間しかかかっていない。キーボードで打つ時よりも出てくる文章が雑なので推敲に余計に時間がかかることを踏まえても、全部キーボードで作業するときに比べて半分くらいの時間で文章が完成する。このスピードに慣れてしまうと、もうキーボードに戻ることはできない。ただし、脳の負荷は本当に高くて疲れる。単にまだ慣れていないだけで、これから慣れて脳が最適解を見つけてくれれば、もっと楽になるのではないかと期待している。 あとはやっぱり音声入力はちょっと恥ずかしい。ヒソヒソ声でも十分使えるとは言っても、デスクでフル集中で目を閉じてモニターの前でぼそぼそやっているというのは、みんなが静かにキーボードをカタカタやっている環境の中では気味が悪い。家でも自分の部屋で目を閉じてキーボードの前でぼそぼそやっているのを家族に見られるのは少し気まずい。間違いなくこのテクノロジーは一般化していくはずなので、いずれ音声入力が当たり前になってオフィスでみんながモニターの前で目を閉じてぼそぼそやるような時代になるか、何か公共の場でも音声入力ができるような物理ツールが開発されることを期待したい。

網走湖調査

今年度から国環研の田辺さん代表の基盤Bプロジェクトの分担に入れていただき、汽水湖に出現するラン藻類の塩分耐性遺伝子の進化的背景にメタゲノム解析から迫るという役割で共同研究を始めている。今回はその調査の第一弾で、網走湖にサンプリングに行ってきた。

 まずは調査前日に湖岸散策。実は昨年の摩周湖の調査でもこの湖岸には来ていたのだけど、今回は船で沖に出ての調査となる。夜は地元の居酒屋でニシンの刺身の美味しさに感動しつつ、翌日の調査の成功を祈念して寝床につく。で翌朝、起きてふとメールを確認すると、先月投稿した論文のリジェクトメールを発見し、寝起きから最悪の気分に。せめて翌日にしてほしかったと思いながらなんとか気持ちを切り替え港へ向かう。今回は漁協の方に協力をいただいて船を出してもらう段取りだ。

これまで日本中の湖で調査を行ってきたけど、深い湖ばかりターゲットにしてきたので、「浅い湖」「富栄養湖」「汽水湖」のいずれも初めて。最大水深は16m程度なので、CTDや採水器の上げ下げも楽々で、深い湖だと1キャストに15分とかかかるので、船上作業時間に制約がかかるし失敗できなくて緊張するのだけど、この浅さだとロープの上げ下げの時間は無視できるほど短く、ほとんどの時間を船上作業に使えるし、やり直しもすぐできるので気楽だった。水深は浅いのだけど、水柱の構造はかなり複雑で、CTDデータを見ると、水温・塩分・酸素とも、水深ごとに上がったり下がったり激しい結果。海水由来の水と河川由来の水が入り組んでいて、湖底付近で硫化水素臭がするほど嫌気なところもあれば、海水の供給があってむしろ湖底のほうが好気的になっている場所もあったりで、湖底地形や海からの距離に応じて、水平方向にもかなり環境の多様性がありそうな感じだった。

 水が濃いので採水量も普段の貧栄養湖の1/5ほどに抑えて、どんどん調査が進む。完全に凪で湖面が鏡面のようになっていて、揺れや風に邪魔されることも全くなく、暑くも寒くもなく、北海道の広々した雰囲気を味わいながら気持ちの良い調査。船上でも時々リジェクトのことを思い出してしまうのだけが余計すぎた。

想像していたよりも湖のサイズは大きかったのだけど、船の足が速かったこともあり、複数ポイントの採水だったにもかかわらず2時間足らずで調査終了。普段やってる深い湖の調査って大変だったんだな・・・と改めて感じるきっかけになった。

 その後ホテルに戻って部屋で濾過作業。最近は学生も連れて複数人で作業を分担するのが定番になっていたので、久しぶりに単独での処理で、かつてのように深夜戦を覚悟していたのだけど、水が富栄養だったり嫌気だったりですぐフィルターが詰まることもあって待ち時間がなくサクサク進んで、荷造りを前倒しで済ませて、夕食を食べに出かけるほどの余裕だった。それにしても18時に網走で出した荷物が翌々日の午前に京都につくのってどうやっているんだろうか。船便のはずなので当日23時過ぎの苫小牧発のフェリーに間に合わせているということだろうか。距離的に無理ではないけど、かなりギリギリだ。ヤマト運輸さんにはいつも本当に助けられている。

 今回のサンプルの解析の結果次第だけど、来年以降も網走湖には来る可能性があって、今後は別の汽水湖も調査する可能性もある。湖調査の経験が一気に広がった面白い調査になった。

2026年7月琵琶湖調査

先週、東京から来られた共同研究者ご一行と琵琶湖に行ってきた。やや風があったけど暑くも寒くもなく快適な調査。今年は6月が体感的にも涼しかったけど、表層水温もまだ23℃。調べてみると、昨年のこの時期には27℃まで上がっていたので、水温で見ても相当な差が出ている。

新しい船での調査は2回目。まだピカピカの船室は前の船よりも広々としていてとても快適。琵琶湖は沖でも普通に電波が届くので問題なく仕事できます(新幹線より全然できます)。

今回は自分のサンプルは余り採らなかったけど、ちょっと培養周りで試したいことがあり、新しく導入したマルチウェルピペットで16サンプルずつ96ウェルプレートに段階希釈するというのをやってみた。分注もピペッティングでの混合も最初にプログラムを組んでしまえば自動でやってくれて大変便利。

久しぶりに顕微鏡観察もしてみたけど、C字型のCL500-11細菌が大量にいた。分裂中の細胞もたくさんいた。やはりこの時期が一番増える時期みたいだ。自分を研究の道に導いてくれたCL500-11細菌。出会ってから15年以上経つけど、変わらずそこにいるのに、変わらず培養できないし、変わらずよく分かっていないし、変わらずかわいい。これからも追いかけます。

歳をとると感情は減るのか増えるのか

  1. 感情的なのは幼くて良くないことである
  2. 感情は、理解と現実の間のギャップに説明がつけられないときに発生する
  3. 歳をとると、知識や経験の蓄積によって「説明できること」が増える
  4. だから歳をとると、理解と現実の間にギャップがあっても、それに自分の頭の中で説明をつけて納得することで自己消化ができることが増える
  5. なので歳をとるとどんどん感情的になることは減っていく
  6. そうなると、精神的に安定して、悩みや苦しみや争いは減る。一方で、感情から得られる刺激や成長も減ってしまって寂しい
  7. でもこれが残念ながら歳をとるということなんだろう

20代後半くらいから、ずっと↑このように考えていたのだけど、最近↓このようなロジックもあるなということを思うようになった。

  1. 全く同じモノを見聞きしても、人によって捉え方は異なる
  2. 捉え方の違いは、見聞きしたモノに説明をつけるための経験や知識の違いで生じる
  3. だから歳をとると、経験や知識の蓄積によって、同じモノを見聞きしても、より高解像度で捉え、より多くの情報が得られるようになる
  4. なので歳をとると「今まで気付かなかったこと」にどんどん気が付くようになる
  5. 新しく気が付くものには、自分の経験や知識で説明できないものも含まれている
  6. 説明できないとき、そこに理解と現実のギャップが生まれ、感情が生じる
  7. なので歳をとっても、感情的になれる機会はまだたくさんある

ただし後者のロジックが成り立つのは、

歳をとって蓄積される経験や知識を、理解と現実のギャップを埋める説明に使うだけではなく、理解を超えた現実を捉えるために積極活用する

というのが実践できている場合に限る。

 子供が、自分がもう意識しなくなっている身近で些細な出来事に新鮮な気持ちで向き合っているのを見ると、「人生に慣れて感情が減る」効果を実感する。一方で、子供が気にも留めない一瞬の出来事に、自分の経験や知識が突然結びついて嬉しくなったり腹が立ったりすることもあって「解像度が上がって感情が生まれる」効果を実感する。自分は「人生ではできるだけ多くのことを考えたり経験したりしたい」「知らなくて良いことなどないはずだ」という思想で生きているので、知識や経験の蓄積を肯定しつつも、「歳をとると感情が減ってつまらなくなる」という不安を解消するこのロジックは心地が良い。ぜひ実践して確度を高めていきたい。

2026年5月 琵琶湖調査

昨日、新「はす」号になってから初めての琵琶湖調査に行ってきた。新船デビューにふさわしい好天・無風の調査日和だった(毎年この時期は桟橋のイネ科花粉がすごすぎて呼吸困難になるのを除けば)。

ひとまわり大きくなった船、造船所で見たときは前の船から大きく変わったような印象だったけど、実際に乗ってみると、思ったよりも違和感が無くて、いつもの感じで調査ができた。作業スペースの形状がかなり変わったので、ここは慣れが必要だと思うけど、大きくなって揺れにくくなってスピードも上がったし、何よりもキャビンが広くて空調付きで、より快適に調査ができそうだ。色々と機材も一新されていて、湖の調査船としてはかなり大規模なものや先端的な装備もついているので、今回は単なる採水だけだったけど、いずれは「この船でしかできない調査」もできると良いなと思う。

湖はものすごく穏やかだったのだけど、アンカーを打っているのにものすごい速さで水が南に向かって流れていて、こんなのは見たことが無かったのでびっくりした。前日の強い南風で北に吹き寄せられた水が戻っているのだろう。そのうち「琵琶湖の北端と南端でゲノム解像度で微生物集団の違いが見られるのか」というを検証してみたいなと思っていたのだけど、これだけ速く水が動くなら、微生物は水平方向にはかなり混ざっていてあんまり差はないのかも、と思ったりした。一方で湖なのに海の潮目みたいになっている場所もあったりして、プランクトンとか魚の集まり方は水平方向に結構ばらつきがありそうだと思った。やっぱ陸水物理っぽい話は結構好きかもしれない。最近色々とうまく行かないことが多くて疲れていたので、久しぶりの調査でとても癒された。

 

創発RA(月額上限20万円) 大学院生を募集しています

 現在採択いただいているJST創発的研究支援事業の中で、大学院生(修士・博士課程)をRAとして雇用(月額上限20万円)できる枠があり、ただいま2027年度春から研究に参画してくれる学生を募集しています。

 RAとして給与を出すからには創発プロジェクトに関連する研究を進めてもらう必要がありますが、簡単に言うと、湖の微生物の大規模ゲノムデータを使って、環境中の微生物の多様性・生態や、ゲノム・遺伝子の進化的背景を明らかにする、という研究で、大規模データが出発地点にありさえすれば、テーマはかなり幅広く設定が可能です。

 「ビッグデータを扱う生物学をやりたい」という方にはかなりマッチする研究内容ではないかなと思っています。対象の生物は細菌とウイルスがメインですが、真核微生物も一部扱っています。なので、「環境中のウイルスに興味がある」「植物プランクトンが好き」といった生物起点の興味で、ゲノムデータを使って切り込みたいという方にもお勧めできます。1種類の生物や遺伝子をとことん深堀りするスタイルでも、多種横断的データを俯瞰的に眺めて新発見を炙り出すスタイルでも、どちらでも研究できます。もちろん、「高解像度データを使って集団遺伝学的な研究をしたい」とか「湖間の比較で環境中の遺伝子の動態や系譜を紐解きたい」とか「時系列データでウイルス防御システムの進化を捉えたい」とか「環境微生物ゲノムの可塑性を調べあげて種の境界の定義に挑戦したい」みたいな、具体的な興味で来てくださる方も歓迎です(あんまりいないと思いますが)。

 対象の環境については「湖」という縛りがありますが、必ずしも湖に興味が無くても良くて、むしろ「湖」という環境の特性を活かすことで、より一般的な問いに答えられないかというモチベーションで研究しています。例えば天然の閉鎖的生態系である湖を、それぞれ「進化実験のフラスコ」のように捉え、互いに対象区(control)や反復(replicate)とみなして相違点や類似点を炙り出すことで、近年に起こった進化や遺伝的ボトルネックを容易に検出できます。また湖は季節的変化が激しいのに再現的であるというのもポイントで、環境変化に対するゲノムや遺伝子の応答をクリアに観察できるという面白さもあります。簡単に言うと、他の環境(海や土壌など)よりも生物学的なパターンが明瞭に観察されやすいために、先導的な研究に取り組みやすい、というのが、湖を対象にする面白さであり、強みであると思っています。そうした点に興味をもっていただけるなら、湖が好きである必要は必ずしもないかなと思います(こう言う私ももともとは海の研究をしたいと思っていました)。

 ただやはり、大自然の中で苦労して自分の手で採ってきた微生物サンプルから研究をスタートさせられるというのは、この研究の醍醐味だと思っていますので、できれば湖の調査や、得られたサンプルからの核酸抽出やシーケンス解析も経験してもらいたいなと思っています。最近の調査の様子については以下の記事を参考にしてください。湖の調査は信じられないほど楽しいです。

 対象とする「ビッグデータ」の詳細はここには書ききれないですが、日本各地の湖で採り進めているオリジナルの微生物メタゲノムデータがメインで、一部の湖ではロングリードデータやメタトランスクリプトームデータもあります。さらに国際共同研究や公共データベースから取得した、世界各地の湖から得られた同様のデータとも横断的解析が可能な状態に整備してあります。さらにメインフィールドとしている琵琶湖では、8年以上にわたる長期時系列メタゲノムや、シングルセルゲノム解析のデータなどもあります。こうして多様なサンプルから多様な技術で得られた大規模湖環境ゲノム情報を、様々な切り口で解析をして論文を発表してきました。以下にその一部を示します。

まだ得られたデータのほんの一部しか発表できておらず、まだまだ無数に切れそうな切り口があるのですが、とても解析しきれないので、ぜひ創発RAの枠組みで、一緒に研究しませんか、というのがこのお誘いです。

 研究環境はトップクラスのものが揃っています。まず、京都大学化学研究所のスパコンシステムの潤沢な計算資源が利用可能です。スパコンには豊富かつ最新のバイオインフォマティクスツールやデータベースが維持管理されていて、サーバーのメンテを自前で行っている研究室も多いことを考えると、とても恵まれた環境かと思います。湖の調査やデータの利用に関しては、国内外のネットワークを使った機動的な研究が可能で、国内では主要な大水深淡水湖はほぼカバーしていて、特に琵琶湖では京大生態研との共同研究にてちょうど代変わりして2026年度進水となる最新の調査船を利用して自由度高く調査ができます。

▲ 研究対象としている国内の大水深淡水湖

 国外では世界中の湖の微生物調査を進めているヨーロッパの研究者らと主に共同研究進めていて、サンプルやデータを共有しながら国内外の湖の比較解析に取り組んでいます。相互訪問共同調査も頻繁に行っていて、日本を拠点にしながらも、日本代表あるいは日本支部のような形で国際的な研究の枠組みに積極的に参画しています。この点では、国際的交流に積極的で、英語を使いたい、海外に行きたい、というモチベーションが強い方が望ましいです。

 私自身は学生時代から一貫して湖の微生物生態学に取り組んできたので、湖に生息する微生物やプランクトンについて熟知しており、生物の特性を踏まえた解析や解釈のアドバイスができます。プログラミングやバイオインフォマティクス解析は勉強してもらうことになりますが、私自身も実験系出身でインフォ解析については学生時代に独学で苦労しながらここまでたどり着いた一人なので、基礎的なことに関してはつまづきポイントも踏まえながら指導できると思います。ただ、どんどん新技術や新ツールが登場する進歩の早い分野なので、「言われたことをやる」とか「教えてもらう」という姿勢ではなく、自分で論文をどんどん読んで新しいやり方に挑戦していくような気概がないと、良い研究にするのは難しいかなと思います。

 ここまで大規模データ解析の話ばかりしてきましたが、湖の微生物の分離培養株を用いた実証的研究にも力を入れており、まだ論文発表は無いものの、科研費等の支援を受けて現在進めている仕事がいくつかあります。「ドライで得られた仮説をウェットで検証する」というのが一番かっこいいスタイルだと思っていて、そのような進め方に賛同いただけるなら、分離株を利用した研究まで取り組める培養環境や実験環境も整っています。是非挑戦してほしいです。

 ちなみに、私はまだPIではないので、創発RAとして来ていただくことになる場合は、私の所属する微生物生態進化学分科(緒方研)を受入先として出願し、京都大学理学研究科の入試を突破してもらう必要があります。

研究室全体では湖以外の研究をしている研究者や学生が多数派ですが、ほぼ全員が微生物やウイルスのバイオインフォマティクス解析に取り組んでいるという点では、知識や技術はほぼ共通なので、その点では学生間や教員とも情報交換しやすい環境だと思います。あとはこのブログにも何度か書いていますが、所属先を選ぶときに一番大事なのは「何をやるか」よりも「誰とやるか」だと思っています。研究室に限らず、サークル・バイト先・会社、どこでもそうですが、必ず対面で会って現場を見て、「この人たちと長く一緒に働けそうか」というのを一番の判断基準にしてもらいたいと思っています。それは、教員の立場から学生をみる場合も同じです。ですので、ご興味を持っていただけたとしても、必ず一度は研究室に見学に来て見てもらってから決めていただきたいです。なお、修士で来られる場合は、創発RA支援の規定により、博士課程まで進学する前提での支援となるので、その点はご承知おきください。また当然ですが、創発RAの枠に収まらない人数や研究内容となる場合は支援をお約束できないこと、大学院入試は通常通りに勉強して突破していただく必要があることもご理解下さい。あと、私自身もそうですが、会社員から博士課程に編入学して研究したい方も歓迎です。学問はもっと気軽に志せるものであって欲しいと思っています。

というわけで、ご興味のある方のご連絡をお待ちしております!質問や見学希望などあれば、まずはメールでコンタクトいただければと思います。修士で来られるか博士で来られるかにもよりますが、院試の出願時期に余裕を持ってご連絡ください。

2026年琵琶湖初め

昨日は2026年初の琵琶湖調査だった。

今回は完全に鉛直混合する前のほぼ混ざりかけの水を採りたかったのだけど、温度躍層がちょうど50mくらいで、狙い通りの時期に行くことができた。今回はRNAサンプルの採集もあったので、久しぶりに採水器直結のろ過システムを稼働させ、船上瞬間凍結(ドライアイス+エタノール)を行った。

冬の嵐が来る前のとても穏やかで最高の調査日和。あまりにも平和なので、調査が終わった後はすべての機器を止めて、無音の湖上をしばらく楽しんだ。暖かくて比良山の雪もだいぶ溶けていたけど、今週でまた真っ白になりそうだ。

生態研の琵琶湖調査船、老朽化で今年度いっぱいで引退が予定されていて、来年度から新船がやってくる。もしかするとこの船での調査は最後かもしれない。はじめて乗ったのは学部生時代の琵琶湖実習だっただろうか。もう18年くらい前の話になるけど、沖島や沖の白石に連れて行ってもらったことをよく覚えている。そこから学部・修士・博士・ポスドク助教とずっとこの船にお世話になり、国内外の共同研究者を乗せての共同調査も何度もやって、たくさんの論文を出してきた。特に印象に残っているのが2018年の夏の出来事だ。この時はつくばでポスドクをしていて、毎月新幹線で琵琶湖に通って調査をおこなっていたのだけど、調査地に向かっている湖上でエンジンから異音が出て調査が中断に。最寄りの港に緊急着岸して、調査を楽しみにして同乗してくれていた共同研究者と失意の中陸路で帰る羽目になった。船は重症だったようでしばらく使えず、毎月続けてきた調査の継続が危ぶまれたのだけど、たくさんの人に助けてもらって、滋賀県のびわかぜやはっけん号にもお世話になり、なんとか調査を継続することができた。やり直して1年ずれていたらコロナで終わっていただろうし、この時のサンプルで何本も重要な論文を出すことができた。これは本当に幸運で、琵琶湖の神と研究者ネットワークに感謝している。色々な思い出が詰まった船で名残惜しいけど、NHKワールドの番組でも使ってもらってたくさん記録も残してもらったし、また振り返りたいと思う。大変お世話になりました!