yokaのblog

湖で微生物の研究してます

頑張ったから不満が見えた1年

 「丁寧に考えて動く年にしたい」と掲げた1年が終わった。「人生に慣れて生き方が雑になってきたのではないか」という自覚に対する自分への警鐘だったのだけど、単に歳をとったことによる影響が大きい気がしていたので、正直なところ、結構難しい目標だったかなと思っていた。が、この1年振り返ってみて、少なくとも昨年よりは、丁寧に考えて動けた1年になった気がしていて、目標達成できた1年だったと思う。理由としては、歳をとって人生に慣れてきたこと以上に、今の職場で3年が経って仕事に慣れてきたことの効果が大きかったのかなと思う。どのようにすれば自分の時間を最大限にコントロールできるか、自分なりに取捨選択のやり方が見つかってきて、それを実践するために、日々丁寧に戦略的に動けたと感じている。

 具体的には、とにかく毎日「研究を進めること」を最大優先事項に掲げ続けることで、それ以外の仕事は割り切って考える、というのを徹底した。良く言えば「リソース配分の優先順位を遵守する」、悪く言えば「手を抜いてよい仕事を見定める」というのを、それぞれのタスクの重要度・緊急度・所要時間をより正確に見極められるようになったことで自分なりに徹底できるようになった。

 これまで進めてきた共同研究や学生との仕事も花開いて、論文は主著が短報で1本、共著が5本ということで、これまでで一番論文数が多い1年になったし、主著論文を新たに1本投稿する、という目標についても、和文総説ではあるけれど、1本執筆して受理までこぎつけた(掲載は来年になる予定)。水面下でもいろいろと共同研究や学生の仕事が動いていて、共著論文は来年も豊作になりそうだし、創発プロジェクトにも採択されて、久しぶりに海外に滞在して新しい国際共同研究も始まって、種まきという点でもいろいろと活動できた1年だった。一昨年から種まきを始めた培養の仕事も、テクニシャンの方との二人三脚で地道にやりつづけてようやく論文になる成果が出つつある。総じていえば、納得できる成果が出せた1年だったかなと思う。

 一方、成果自体にはそれなりに満足できた裏で、

「これ以上もう頑張れない」というくらいに頑張れた1年だったのに、これだけしか進めなかった、という絶望感

からくる不安や不満も大きいというのが、1年を振り返っての今の心境だ。今年自分が一番メインで進めたいと思っていた研究について、少なくとも論文の原稿を書くところくらいまでは行きたかったけど、未だにFigを作るところまでも行けていない。相変わらず、2年前に書いた「大学の先生はいつ自分の論文を書いているのか?」という問いの答えは見つかってないし、相変わらず、今も細切れ時間や休日返上で自分の研究を進めるしかない状況だ。その休日も、独身時代ならいくらでも喜んで捧げていたけれど、今は家庭も大事なのでそうもいかず、「休日に仕事ができる人はうらやましい」という不満に侵される不健康な状況に苦しんでいる。

 1年中、常に「この仕事が一番やりたい最高優先順位の仕事だ」と頭の中に考え続けていたにもかかわらずこの状況なのは、とても残念だったし、何よりも精神的につらかった。「やりたいけどできないこと」が増えると辛いので、「やりたいこと」は少ないほうがいいのではないか、というのは、度々書いていることだけど、やりたいことをやりたいと願わないと前に進めないのに、それを強く願うほど叶わなかったときのギャップに苦しむ、という構造は、自分の人生のテーマといってよいくらい、公私で苦しんでいる難しい問題だ。

 この不満は、自分が人並みに仕事がはかどらないからなのか、それとも自分が自分のペースを過大評価していたからなのかは分からない。いずれにしても、これ以上は頑張りようがないので、来年以降もこのくらいのペースでしか研究を進めることはできない、というのを受け入れないといけない。よく「思っているよりも人生でできる研究は少ない」とか「定年前になってやり残した研究が見えてきて焦りだす」みたいな話を聞くけれど、自分もそろそろ、残り時間で何をどれくらいやれるか、そして何をやれば満足なのか、を考えても良いのかなと思う。研究すべきことは無限にあるけれど、無限に満足しないまま終わるのは嫌だ。それに、将来は研究以外の人生にも挑戦できればと思っているので、そのためにはどこかで満足して、足を洗う日がなければならない。その満足点を見定める・・・のを来年の目標にするにはまだ早すぎる気がするので、来年の目標は、「今年と同じくらい頑張ったうえで、自身の研究ペースに満足すること」にしたい。色々と花開いて楽しい年になる気はしているけど、やはり心から満足しないとつまらない。期待値を上げすぎず下げすぎず、「自分はこれくらいのペースでやっていくんだ」という感触に自信を持てるようになりたい。