yokaのblog

湖で微生物の研究してます

平成も琵琶湖もおしまい

 昨年の5月から毎月続けてきた琵琶湖の調査、12か月分のサンプルを採り終えて一段落。毎回つくばから滋賀まで往復するのは大変だったし、途中で船が使えなくなって予定が大きく狂うトラブルに遭いながらも、色々な人に助けてもらって何とかここまで来れた。ホッとしていると同時に、恵まれた環境に感謝している。

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調査の内容としては、琵琶湖沖の表層・深層の水をフィルターで真核微生物(5~200 μm)、原核生物(0.2~5 μm)、ウイルス(<0.2 μm)の3画分に分けて採集するというものだけど、大変だったのは、DNAだけでなくRNAも採集するという点と、多少のロス・ミスがあっても(できればPCRフリーの)シーケンスライブラリ作成に耐えうるだけの十分なサンプル量を確保したいという点だった。つまり、採集したサンプルを即座かつ大量に、さらに3つのサイズ画分に分けて濾過し、瞬間凍結させる必要がある。昨年の5月に初めてこれをやったときは、バタバタで上手くいかないことだらけで「なんて大変なことに手を付けてしまったのか」と思ったけど、毎月試行錯誤しながらシステムを改良していって、秋ごろからは8枚のフィルターで同時に濾過できるようになり、フィルターの交換も最小限かつワンタッチ化して、10Lの湖水を2水深同時進行で1時間弱で濾過して凍結まで持っていけるまでになった。

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↑船上濾過システムの最終形態

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ドライアイスエタノールで瞬間凍結されるサンプル

さらに、ドライで得られた仮説をウェットで検証できるよう、同時に顕微鏡観察や細胞計数用の固定サンプルも採集して冷凍保存している。加えて、本当は栄養塩や溶存有機物などの化学データも取りたかったのだけど、何しろこの調査は全て一人でやっているので、さすがに手が回らなかったのは残念だ。一方で、この規模のサンプルを個人で採集できる機動力・コンパクトさこそがこの琵琶湖研究の強みであり、魅力だとも思う。サンプルもデータも思い通りに採って、全て独り占めできる。例えば規模の大きな海の研究だとこうはいかないだろう。まぁでもやっぱり一緒にやれる人がいてくれれば嬉しいのだけど・・・

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さて、達成感を感じるにはまだ早くて、この後が大変だ。全ての画分からDNA/RNAを抽出・精製して、シーケンスまで無事に持っていかないといけない。特にメタトランスクリプトームは一昨年、結果を焦って実験したせいで失敗しているので、今回は丁寧にやっていきたい。