yokaのblog

湖で微生物の研究してます

AVW10

 運営委員を務めていた10th Aquatic Virus Workshop (AVW10) が無事終わった。本当は2018年のAVW9(アメリカ)にも参加したかったのだけど日程の都合で断念していて、当時はまさかその3年後に自分が運営する側になるとは思ってもいなかった。AVW10を宇治でやることは昨年12月に京大に着任する前から知っていたので、運営で忙しくなることは半年以上前から覚悟していた。初めて学会を運営する側に立ち、しかもそれが国際会議で、オンラインで、ということで大変だったけど、その分色々な経験を一気に積むことができたのは良かった。オンラインを活かした新たな試みも色々と導入してみて、概ね期待通りに機能して満足してもらっていたようで良かった。細かい反省点はあるものの、総じて見れば成功だったと言っていいのかなと思う。

 参加してみての感想だけど、オンラインでもちゃんと「国際会議感」があって、刺激になったし勉強になった。国際会議に出る意義としては、世界の最先端の研究者と交流し、互いの仕事を知れるということの他に、「研究者の名前や顔と仕事を紐づられるようになる」という効果も大きいと思う。海外の研究者と顔見知りになって、論文を読むときにそれを書いた人の顔が思い浮かぶようになることで、その研究を内容だけではなく、その人(または研究室)の一連の研究の流れの中での位置づけや狙いを含めて理解できるようになり、記憶にも残りやすくなる。AVWは初めて参加するコミュニティで、初めて顔を(画面上だけど)見る研究者が多かったので、「よく見るあのシリーズの仕事はこのグループがやっていたのか」とか「あのすごい論文を書いていた人はこの人だったのか」という発見が何度もあって良かった。

 オンラインならではの良さもあった。発表が録画されていて、聞き逃した場所を聞き直したり、飛ばしたい場所を飛ばしたりできるのは、内容を効率よくかつ完全に理解するのにとても有難い機能だった。オンラインでの質疑も対面より緊張感が薄くて、(特に若い人にとっては)質問がしやすい雰囲気があるなと感じたし、自分が質問できなくても、大御所同士が最先端の議論をしているのを横で聞いて「最先端の人たちでもこういうところでつまずいているのか」というのを知ることができたのはオンラインの良さだったと思う。一方で、時間をかけた密な交流はオンラインでは難しくて、相手の顔も2次元の画面と背景の中でしか表示されないので、対面で直接会うのとは交流や印象の質がやっぱり違って、オンラインが便利になったとは言っても対面が無くなることはなさそうだなとも思った。今後は両者の良いところを組み合わせたやり方や、オンラインとオンサイトを交互に開催するようなスタイルが普通になっていくんじゃないかなと思う。あと疲労度という点では、日本で日常生活を送りつつも、海外の時間に合わせて深夜のセッションもこなし、連日長時間ただ画面に向かってずっと英語でやり取りをするというのは、非日常感と開放感で疲れがごまかせるオンサイトの国際会議よりも、ある意味ハードだったと思う。

 今回はちょうど手持ちのウイルス研究ネタが無く自身の発表は見送ったこともあり、自分を相手に知ってもらう機会が無く、情報を得るだけの一方向の交流になってしまったのはすこし残念だ。次回は2年後にカナダで開催されることになったけど、今度は現地で発表し、対面で交流したい。