yokaのblog

湖で微生物の研究してます

96wellの細菌を1時間半で数えてくれる機械

96wellフォーマットでセルカウントができるフローサイトメーターがやってきた。数年前からずっと欲しいと思っていたのだけど、今回、ラボで導入することが決まり、とてもありがたい。

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早速、琵琶湖で採ったサンプルを使ってカウントをやってみた。最初は閾値やゲインやプロットの軸のセッティングがうまく行かなくて何も検出できず冷や汗をかいたけど、細菌サイズのものを検出するためには色々と特殊な設定が必要だったようで、2日ほど勉強しつつ試行錯誤してベストなセッティングにたどり着いた。10000cells/mL程度の細菌でも検出可能で、それを96wellフォーマットで一気に数えてくれる。感度的にはウイルスも蛍光染色すれば十分検出可能だ(ただしノイズの少ないサンプルを準備することが必要)。今までは1wellずつ染色して顕微鏡で確認するしかなくて、1プレートを検鏡するだけで1日がかり、しかも細胞密度が薄いと正確に計数するのがとても大変で、精神的にも疲れる大仕事だった。それが1プレート1時間半で自動でカウントしてくれるようになるのだからすごい。

 予備検討がうまく行ったので、本番サンプルである、2年前から仕掛けていた96wellの限界希釈培養系のスクリーニングも行った。4プレート384wellからあっという間にポジティブな34wellが決まった。それを検鏡してみると、単離できていそうな均質な細菌で占められるwellもちらほらあった。本命ではないかと思われる細菌が採れてそうなwellも見つかった。シーケンスをするのがとても楽しみだ。

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今後は96wellフォーマットでのハイスループットな培養や細胞カウントを活用して効率的に研究を進めたい。特に、貧栄養性の細胞密度が低い細菌の検出には適したプラットフォームだと思う。限界希釈培養のスクリーニングのほか、複数の培養条件を並列で試したり、FISHと組み合わせて集積度を確認したりといった活用も考えられる。せっかく高い機械が導入されたので、それに見合ったユニークな研究に発展させなければならない。