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yokaのblog

琵琶湖で微生物の研究してます

系統地理ワークショップ@京都

 京大のセミナーハウスで行われていた生物群横断系統地理ワークショップなるイベントに参加してきた。僕の研究では「なぜ同じ系統の細菌が世界中の別々の湖に共通して生息しているのか?」という疑問があって、他の生物の研究から何かヒントは得られないか、ということで今回情報収集を目的に参加してみた。

 自分の研究にダイレクトにつながるようなアイデアは得られなかったけど、普段とは全く異なる研究者コミュニティに入って、系統地理界隈のトレンド(何が分かっていて、何が分かっていないのか?)を大まかに把握できたのは良かった。

 もう少し突っ込んだ、内容とは別の感想では、直前に参加した微生物生態学会などと比べて、研究のモチベーションが純粋である、ということが印象深かった。講演やポスター発表でも何度も「面白い」という言葉が出てきたし、「その生き物が好きだから研究している」という人が多いように感じた。良くも悪くも「お金の臭い」が感じられない研究だと感じた。僕は基礎研究の将来には悲観的で、「面白いからやる研究」を「趣味の延長」みたいに捉えていて、税金を出すことを快く思わない人が社会にはたくさんいるし、これからも少子高齢化で財政が厳しくなっていく中で、そういう研究にお金を出す余裕はますます無くなっていくと思っている。だから、ワークショップの場でも議論があったけど、「なんの役に立つのか?」ということを急いで議論しないとマズいのではないかという不安を感じてしまった。新しいものを対象にすれば、面白い発見が見つかるのは当たり前であって、本当の戦いは「たくさんの面白い発見の中での優先順位をいかに上げるか」というところだ。面白いことももちろん大切なのだけど、残念ながら無い袖はふれない。「それは税金でやることではない」と言われたら、悔しいけど黙るしかない。もし「面白い」を前面に出すのであれば、クラウドファンディングみたいに「面白い」と感じてくれる人から直接研究費を貰うような方法を考えていくしかないと思う。

 じゃあ、どうやって「役に立つ」ことをアピールすればよいのだろうか。僕が今回この集会に素人なりに参加して感じたのは、「系統地理」って言うけど、色んな生き物、色んなレベルの変異、色んな地理スケールでやっている人が集まっているので意外とその定義は難しくて、結局のところ「野外での遺伝子の移動を追いかけるプロの集まり」がこの学問分野なのではないかということだ。だから、有害な遺伝子(耐性遺伝子とか)がどう広がっていくのか、とか、有用な遺伝子のソースが失われないようにするにはどうしたらいいか、みたいなところで、統一見解を形作っていければ、この分野のプレゼンスもより高まるのではないかと感じた。「そんなこととっくに考えてるよ」と言われそうですが。

 そしてやっぱり大きな生き物の研究と比較して感じるのは、「微生物って絶望的なくらい何もわかっていない、でもだからこそ、これからの伸びしろも大きそうだ」ということだ。そもそも、系統地理の研究で重要な単位である「種」の概念すら、細菌の世界では訳の分かっていない状況だ。大きな生き物の研究では当たり前のように出てくる「違う場所で採れるものは遺伝子レベルで見ると全然違う」みたいな話が、細菌でみつかるとトップジャーナルに乗るような大発見として扱われる*1次世代シーケンサーのおかげで、今まさにボーナスステージで、そういう発見がものすごい勢いでなされている。僕も、大きな生き物の研究にヒントを得ながら「細菌の移動」の謎を解く発見をしていきたい。