久しぶりのサンプリングで、長野県の青木湖に行ってきた。まだ調査ができていないエリアでありながら、それなりの水深があり、しかも比較的近くて小さくて調査しやすい、ということで優先順位的には常に上位にあったのだけど、なかなか時間が無くてやっとの訪問になった。てっきり火山系の湖(堰止湖とか)だと思っていたけど、調べてみると構造湖に分類されるらしい。大きな流入河川は無く、湧水が水源になっている湖で、水位の変動が大きいとのことで、調査日は減水気味でボートへの乗り込みが少し大変だった。青木湖では西湖と同様に動力船が禁止されていて、西湖以来の手漕ぎボートでの採水。西湖と同様、沖合に固定ブイが浮かんでいるので、そこにボートを括り付けて固定して作業する。

調査日は風が心配されたけど、予報ほどは吹かなくて予定通りに出ることができた。霧島御池と同じく、学生と共同研究者の3名体制で、船が小さいので2隻で出船。15分くらい船を漕いで湖心に浮かんでいる複数のブイから、一番深そうな場所にあるものを選んで、2隻を連結して調査開始。まずはCTDを降ろしてみたところ、56mで着底。ほぼ最深部で調査ができていることを確認し、船上でタブレットに接続して環境プロファイルを確認する。温度躍層とクロロフィルピークが明瞭に見られ、溶存酸素はダラダラと湖底にかけて下がりながらも嫌気にはならない、という感じで予想通り。透明度がとても高く貧栄養であることが予想されたので、採水深度は表層と深層の2水深に絞って、その代わりに採水量を増やすという作戦に決めた。

あとはひたすら採水器をロープで降ろして引き上げて、横で待機しているメンバーに水を容器にくみ取ってもらう、というのを繰り返して、全部で40Lほど採水。前回の霧島御池の際、90mのロープ採水でも意外と楽に感じたので、今回も楽かなと思っていたけど、意外としんどくて、40mの引き上げの最後は腕や腰に結構来ていた。おそらく、ボートが小さくて足場が安定しないことが大きくて、逆に然別湖で氷の上で調査した時は約100mのロープ採水でも本当に楽だったので、足場の安定性が引き上げのしんどさに結構影響するのだなということが理解できた。

採水が終わったら陸に上がって固定が必要なサンプルを処理し、宿に戻って濾過スタート。霧島御池と同様、コテージを貸し切って濾過機材を展開。一人でやっていた時はホテルの一室で頑張っていたけど、コテージのほうが車からの距離が近く、複数人で作業するときも広くて楽で、機材を洗ったり乾かしたりも容易なので、定番になりつつある。

今回は採水深度が少ない代わりに濾過量が多かったので、流路を2分岐させて短時間で大量濾過する方法をとった。予想していた通り、貧栄養湖で生物量が少なく、いつもよりも多くの水を濾過する必要があったので、たくさん水をとっておいて良かったし、2分岐システムの活躍で早い時間に濾過を終わらせることができた。おかげで明るい時間には全て切り上げることができて、前回と同様に、調査当日に夕食と温泉を楽しむ時間まで確保できた。一人で深夜までろ過していた時代には考えられないことだけど、調査の効率化が進んで、素晴らしいことにこれが定番になりつつある。今回は忙しい日程にねじ込む形でかなり短期間で一気に企画したので、久しぶりの調査で何か忘れていないかドキドキしたけど、全て計画通りに終わってほっとした。むしろ、前回以上に効率的で楽に作業が終わって、自信になる調査だった。
翌日は朝に白馬の山を散歩して帰路に着いた。今回白馬を訪れてみて面白かったのが、夏でも外国人がとても多くて、どこに行っても英語表示があって、中心部はレストランで英語で話しかけられるレベルで外国化していたことだ。オフシーズンの平日ということで比較的閑散としていたけど、きっと冬はすごいんだろうなと思った。

今回は京都から全行程レンタカーだったので、機材の輸送について考えることも少なくて、サンプルもドライアイスと保冷剤だけで持ち帰ることができたので、飛行機や新幹線で行く調査と違ってとても楽だった。そしていつもの事ながら、様々な不確実要素がクリアされ調査が無事に終わった後に味わう達成感と安心感、そして調査をリードする責任と重圧からの開放感は格別で、このために研究をやっているのだと思い出させてくれる最高の瞬間だった。そして、ここまでしないと取れない世界で唯一のサンプルから一体どんな発見が出てくるのか、解析結果がとても楽しみだ。