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yokaのblog

琵琶湖で微生物の研究してます

Chloroflexi門・Anaerolineae綱の細菌

僕が研究対象にしている細菌は、ChloroflexiAnaerolineae綱という分類に属する。門レベルでも綱レベルでも、分子系統での多様性が高く、色んな環境から出てくるくせに、ほとんど単離株が取れていない、謎の多い分類群だ。この分類群について知るのに、とても参考にさせてもらている名作レビュー(Yamada and Sekiguchi, 2009)があるので、簡単に整理してみる。

 

Chloroflexi門について

Wikipediaにも説明があるけど、もともとは緑色非硫黄細菌(Green non-sulfur bacteria)として記載されたもので、温泉の微生物マットに住む糸状の光合成従属栄養の細菌として知られていたものだった。ところが、16S rRNA遺伝子を使った研究が進むにつれて、あらゆる環境から見つかることがわかり、プロテオバクテリアと同等の多様性をもつ大きな分類群であることが明らかになってきた。

現在は以下の7つの綱レベルの分類で整理されている。

 

  • Anaerolineae綱⇒もっとも多様性が高く、環境から得られたChloroflexi門クローンの7割がここに含まれる。16S rRNA遺伝子の配列では18%の多様性がある(後述)
  • Caldilineae綱⇒もともとAnaerolineae綱に含められていたが、系統距離や生理的活性の違いから分離された。
  • Dehalococcoides綱⇒塩化化合物を分解できる細菌を含むことから研究が進められている。
  • Chloroflexi綱⇒もともと緑色非硫黄細菌として知られていた系統を含む。
  • SubphylumⅣ⇒多様な環境から見つかる単離株のない系統。深海で優占するSAR202クラスターも含む。
  • Thermomicrobia綱⇒中温~超高温を好む化学合成従属栄養のもので構成される。
  • Ktedonobacteria綱⇒好気性の株として近年新たに分離された。

 

クローンが得られた場所は多岐にわたり、これまでに温泉や高塩環境の微生物マット、土壌(高温~ツンドラまで)、底泥(海・川・湖)、高温の底泥、塩化有機物で汚染された土壌、水中(海・湖)から見つかっている。特に海底泥や土壌では多く見つかっている。

人工的な環境からも多く見つかっていて、特に活性汚泥や下水処理後のスラッジに多く見られるほか、微生物燃料電池からも見つかっている。これらは主にAnaerolineae綱、Caldilineae綱、Chloroflexi綱に属し、産業的な観点からも、研究の必要性が高い分類群である。しかしながら、門全般にわたり難培養の微生物が占めており、単離株が極めて少ない。

 

Anaerolineae綱について

上述のとおり、多様なChloroflexi門の中でも最大の多様性を誇るAnaerolineae綱だが、これまでに単離・記載されたのは6種のみ。これまでに分離されたものはいずれも以下のような特徴をもつ。

  •  嫌気性
  •  中~好熱性
  •  群体性の糸状細菌
  •  化学合成無機または従属栄養性

ただし環境からのクローンは好気的な場所や、冷たい場所からも多く見つかっている。炭水化物やアミノ酸を利用するが、無機の窒素や硫黄を利用するものは今のところ見つかっていない。どれも倍加時間が45-92時間と非常に長く、培養が難しい要因になっていると思われる。

生理的な性質はまだ分かっていないことが多いが、N-Acetylglucosamineを好気的に分解できることが複数の研究から確認されていて、他の細菌の死細胞を資化しているのではないかとも言われている。

なお、代表的な単離株である、Anaerolinea thermophilaについては、全ゲノムが読まれている。