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湖で微生物の研究してます

香港科技大学でセミナーしてきました

 京大から香港科技大学(HKUST)に移られた生態研時代の先輩の潮雅之さん学内のセミナーでの講演に招待いただき、2泊の香港出張に行ってきた。最初に講演の話を貰ったときは当然オンライン発表だと思っていたので、本当に香港に招待いただけるということを知ったときはとても興奮した。

滞在中はずっと天気が悪くて青空もオーシャンビューも楽しめなかったのは残念だけど、海岸の崖にそびえたつキャンパスを上から下まで一通り案内してもらって、実際の学生や教員の生活を見せてもらえたのはとても貴重だった。

海外からの学生の比率が高いことや、家賃が高いこともあって、学内に学生や職員の宿舎がたくさんあったのが印象的だった。学内にスーパーがあり、休日も食堂がやっていて、香港の中では都心から離れた場所にあることもあって、多くの学生がキャンパスの中で生活を過ごしているようだった。キャンパス内には学生や教職員が自由に使えるバスケコートやテニスコート、陸上トラックやプールやジムまでもあり、至れり尽くせりという感じだった。またキャンパス内のあちこちで工事していて、発展の勢いを感じさせられた。驚いたのが食堂のクオリティで、京大の学食とほとんど変わらない値段で、料理の種類も質も京大とは比べ物にならないくらい立派だった。これは本当に羨ましいと思った。日本食も人気のようで、独立したカウンターが設けられているほどだった。

で、肝心のセミナーだけど、自分の研究分野に近そうな先生方が来られないという事前情報もあって、「内容がミスマッチだったらどうしようか・・・」という恐怖があったのだけど、小さめの講義室が埋まるくらいに人が来てくれて、専門用語満載のプレゼンもきちんと理解してもらえて、時間外まで議論や質疑で盛り上がったので、終わってみればとても安心したし、満足できた。学生からも結構本質的な質問が来て、レベルの高さを感じた。ヨーロッパならともかく、香港でも学生が全員普通に英語で議論していてすごいなーと感じたし、日本もマゴマゴしてないで授業全部英語でやるくらいしないと追いつけないぞと思った。

 その後セミナーに来てくれた人たちに招待いただいて、海鮮料理をいただいた。これが「日本では食べられない美味しいものが食べたい」という自分の欲望を完全に満たしてくれる最高のおもてなしだった。あまりにも種類が豊富で全然攻略できなかったので、ここにはまた行かなければならない。

飲みながら、国ごとの研究環境の違いを含めて色々な話で盛り上がった。自分は日本をむやみに下げる言説は好きではないけど、大学院生がちゃんと給料をもらっていてそれをサポートする大学の制度がある話や、研究者が学務や事務の負担、予算、給料も含めて日本よりもリスペクトされている面などは、羨ましいなと思ったし、負けているなと思ったし、見習ってほしいなと思った。今回の自分の旅費や懇親会費も、大学からの財源でサポートいただけたとのことだけど、同じような制度が自分の大学にもあったらどれだけ国際交流が進むだろうかと思う。

 で、翌日は土曜日で夜の飛行機までフリーだったので、観光して回った。自分は海外に行くと、混んでいる定番スポットよりも、生活感のある住宅街や、景色がきれいな自然や公園の中を走ったり歩いたりしながら見て回るのが好きなので、今回もランニングする気満々で準備してきた。が、天気が悪かったのと、香港の街中でどうしてもコインロッカーを見つけることができなかったので、2泊3日の荷物とPCが入ったバックパックを背負ったまま、ひたすら歩きまくるツアーに変更した。地図を見ながら手当たり次第に面白そうな場所を無計画に歩きまくって、500mくらいの山を越えたり、リアルコンクリートジャングルに迷い込んだり、めちゃくちゃ遠くまでいける大陸直通の高速列車(しかも全部満席)に驚いたりしながら、おそらく1日としては人生最高の55,000歩を歩いた。

昨年夏のスイス出張では「海外とのコロナ対策の温度差がもっと縮まるまでは海外出張はしたくない」という感想で全然楽しめなかったけど、ちょうどその温度差が無くなってきたタイミングでの出張になり「楽しい海外出張が戻ってきた!」というのを実感できた三日間だった。実際、香港も日本とちょうど同じ頃にマスクしなくてよくなって、街中や電車でマスクしている人の割合も日本とほとんど同じくらいに感じられた。

 これまで海外出張といえばヨーロッパが多かったので、時差や食事や文化の違いで疲れることが多かったけど、時差は1時間、食事も不自由せず、文化的にもなじみやすくて、こんなに海外って楽だったっけ?という海外出張だった。漢字圏かつ英語が公用語でどこにでも表示されていることもあって看板やメニューで「何が書いてあるか分からない」というストレスもほとんど無かった。あまりにも海外感が無かったせいか、帰国後の電車の中で周りの会話の日本語が聞こえてきても脳が切り替わってなくて中国語のように聞こえて理解できなくなるという面白い症状も体験した。

 人生最短の海外出張だったけど、とても楽しくて、充実して、色々な経験と知見が得られた有意義な出張だった。潮さん、ご招待いただきありがとうございました。