yokaのblog

湖で微生物の研究してます

科研費若手落ちた

 環境中の未培養の細菌のゲノムが簡単に得られる時代になって、原核生物の多様性や「種」の実態を全ゲノム(=塩基配列で生物を分類するうえで最高解像度の情報)で捉えなおす動きが加速している。その中でも重要な未解決課題の一つが、「種間の明確な境界」と「種内の膨大な微小多様性」という、一見相反する多様化機構が両立しているメカニズムの解明である。本研究では、湖間の微生物群集の比較メタゲノム(高網羅度)と、ロングリードメタゲノム(高解像度)によって浮動要因・環境要因・種特異要因を切り分けて議論しつつ、原核生物にユニバーサルなゲノム多様化メカニズムを炙り出し、その「種」の概念の実像に迫る成果を目指す。 

 大体こんな内容だ。これまでに書いてきた申請書の類って、大体数か月後に読み返すと「もっとこう書けば良かったな」という感想になって、当時の自分の未熟さと自分の成長を感じていたところだったけど、昨年の秋に出したこの若手研究の申請書は今読み返しても結構よく書けていると思う。もっと言えば、当時は猛々しく「これを若手研究で出すのはもったいない」とさえ思っていて、前年度で無くなった基盤Bの若手優遇枠がまだあったらそっちに出していたかもしれない。結局「もしダメだったら自分が代表の研究費がゼロという事態になってしまうので、ここは手堅く基盤となる研究費を確保しておこう」という生意気な考えで若手に申請を出した。当時は自分の周りのメンバーもほとんどが若手研究を貰っていたこともあり、自分もまぁ大丈夫だろう、と根拠なく自信満々だった。

 それが4月1日になってもログイン先の画面の表示が変わらなくて本当に焦った。「異動を挟んだから他の人よりも結果が来るのが遅いのかな」とか考えながら1日中画面をリロードしていたけど、何も起こらず、そのまま時が経ってしまった。で、本日結果が正式に開示されて、無事不採用の通知を受け取った。学振はこれまで全勝だったので、「おお、これがあの不採用ABCの画面か」となった。

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 「研究方法の妥当性」の「研究経費と計画の整合性」で評価が低かったのは、ほとんどの費用を初年度のシーケンス解析に割り振って、それでもまだ足りないので一部のサンプルの解析をスキップするような計画になっていたので、雑だという印象を持たれてしまったのかなと思う。予算規模に沿ったコンパクトな研究計画にして、使い道や配分ペースももう少し丁寧に割り振るべきだったと思う。これは次回に行かせる反省点だ。一方で「学術的重要性」で低評価がついているのはやはり納得ができないし、何が悪かったのかが良く分からないので反省のしようがない。「他の申請の方がもっと重要な課題に挑戦していたから」と言われればそれまでだけど、一体どこが伝わらなかったのかのフィードバックがあればと思う。4人のジャッジの半分に「学術的独自性・創造性」を「やや不十分」以下と評価されているのだから、客観的に不十分な点があったはずで、「相性が悪かった」で片づけるのには納得感が足りない。まぁ、理由もなく落とされることが常のこの世界で、これだけフィードバックを貰えるだけでもありがたく思わなければならないのかもしれない。世界は厳しい。

 というわけで、今年度は代表の研究費がゼロになって、計画の多くがストップしてしまった。幸いにも手元にデータがたくさんあるので研究が止まる事態にはなっていないけど、次の種まきがストップするのは良くないので、何とか別の研究費をいただけるように申請を進めたい。

 

追記:本年度の反省を活かし、翌年リベンジに成功しました