yokaのblog

湖で微生物の研究してます

違和感がないという違和感

 京大に着任してから最初の2週間が経った。つくばから京都へ引っ越して中0日で初出勤で、生活も仕事も何もかもが一気に変わって、脳が適応するのに精いっぱいで、夢の中にいるかのようなフワフワした2週間だった。ようやく仕事環境の整備や、家の片付けも一段落が見えてきて、やっと新天地での現実が始まった心地だ。

 過去の記事で書いたように「異動直後の違和感は今しか味わえないからすぐに書き留めておくべし」という考えがあったので、違和感があれば(書ける内容であれば)この場に書き残しておこうと思っていたのだけど、今のところ、驚くほど違和感がなくて、そのことが一番の違和感かもしれない。

 もちろん、職場の雰囲気も、仕事の進め方も大きく変わったのだけど、どれもこれまでのところ大体予想通りの変化で、すんなりと受け入れられてしまっている。一番予想通りで嬉しかったのが、京大の雰囲気が自分にはやっぱり合っているな、と感じられたことだ。赴任して最初の数日は事務手続きや挨拶回りでキャンパスのあちこちを訪ねて回っていたのだけど、歩いているだけでワクワクしてしまうし、ここでこれから働けるのだ、ということにニヤニヤしてしまった。具体的に何がよいのかは簡単には言葉にできないのだけど、京大は自分が楽しい大学生活と充実した研究生活を計9年間もおくった場所なので、やはり「戻ってこれた」という気持ちが大きいのだと思う。事務周りの自由度に関しても、どことも雇用関係が無いことにされて色々と融通が利かなかった学振特別研究員という立場から、会社員時代以来5年8か月ぶりの正規雇用となり、格段に身動きがとりやすくなった。研究費の申請や各方面への発言をオフィシャルな立場で堂々とできるのは嬉しいし「やっとか」という思いだ。一方、その裏返しでもあるのだけど、オフィシャルに大学の一員になったことで、学内の事務や通知で飛んでくるメールの件数の多さとそのメールの読みにくさ(用件を先に書いてくれないので捨てていいメールかどうかが分かりにくい)にはちょっとうんざりしている。これは「今しか味わえない違和感」かもしれない。

 今までは「組織のため」よりも「自分のため」がどうしても優先しがちだったけど、オフィシャルかつ責任のある立場に立たせてもらって、これからは「組織のため」のウエイトも増やしていかなければと思う。一方で、自分の研究に脂がのるのもこれからなので、そこにもしっかりとリソースを割けるよう努力したい。それからこれは抱負でもあるのだけど、学生にとって親しみやすい教員になりたい。前所属(産総研)での反省点の一つは、自分のことに没頭しすぎて、話しかけづらい雰囲気を作ってしまっていたのではないかということだ。話しかけられれば喜んで議論や相談に乗るのだけど、こちらからあまり話しかけないし、忙しそうに(見えるフリを)していて話しかけづらい、というのがあったと思う。自分は放っておくとそういう態度になってしまうので、意識して話しやすい雰囲気を作ることを忘れないようにしたい。

 先に書いたように、この2週間は環境への適応に消費して、本格稼働するのはこれからなので、まだ味わうべき感想はほとんど味わえてないんじゃないかなと思う。オフィシャルな身分を得たことに加え、意外にいろんな人がここを見ていることが最近分かってきたので、あまりあれこれ自由に書きづらくなってきたのだけど、その時々の感情や考えが失われる前に記録しておく場所としてこれからも細々と続けたい。