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湖で微生物の研究してます

自分が変わらなければならないのか?

 コロナウイルスの自粛期間に入って約3か月が過ぎた。出張はもちろん、出勤すら満足にできない我慢の日々を過ごしている。思い起こせば、2月末に関西出張に行った頃にはもう日本で感染者が確認され始めていて、マスクをしてドアノブや手すりをできるだけ触らないように気を付けてはいた。だけど相変わらず飲み屋も電車も満員で、帰りの新幹線は席がとれなくて仕方なく差額を払ってグリーン車で帰ったほどだった。その頃にはまさかここまでのことになるとは思っていなかったし、それが最後の出張になるとも思っていなかった。

 悪いニュースばかりの中でも、テレワークやテレビ会議といった仕事のオンライン化を歓迎する声は多い。だけど個人的にはそういう風潮は嬉しくない。やる前から分かっていたことだけど、僕は職場と家で、仕事とプライベートをきっちりと区切るスタイルで生きてきたので、家が仕事で汚染されることがかなりのストレスになった。あまりのストレスに体調を崩してしまったので、途中からは家ではあまり根詰めて仕事しすぎないようにセーブしていて、おかげで生産性はものすごく下がっている。

 かたや「テレワーク最高、生産性上がりまくり!」と言っている人達もいるみたいなので、働き方って本当に人それぞれなのだなと思う。自分にはテレワークの何が良いのか、さっぱり分からない。好きなだけお菓子が食べられるとか、昼休みをのんびり家族と過ごせるとかのメリットはあったかもしれないけど、それ以外の圧倒的なデメリットとは比較にならない。個人的には、テレワークが良いと言っている人の多くは、「辛い通勤から解放された」ことや「職場のノイズから解放された」ことが理由になっているように見えるので、通勤や職場に不満が無かった自分は恵まれていたのだなと思いつつ、そういう問題は「テレワークの良さ」とは別に議論して欲しいと思っている。

 オンライン会議やオンラインプレゼン、さらにオンライン飲み会も何度かやってみた。画面共有などを使えば、「やりたいことは大体できるな」とは感じたけど、あくまで「直接会えない場合の代わりの手段」であり、「本来のコミュニケーション手段」としてリアル会話を代替する存在にはなりえないと感じた。今回の出来事をきっかけにオンラインでのミーティングを普及させる動きが加速しているけれど、電話がずっと昔からあるのに毎日新幹線が満員になるほどみんな出張していたことを考えれば、「やっぱり直接会って話さないとダメだよね」という流れに戻っていくのではないかと思っている。

 僕は調査・学会・打ち合わせ等での出張には積極的だったけど、それは国内外の各地に出向いて色々なものを実際に見て、色々な人と実際に会って話すことが、自分にとって大切なことだと考えていたからだ。何より、そうやっていろんなものを見聞きする経験は単純に楽しくて、仕事だけではなく、人生を豊かにしてくれるイベントでもあった。だから、色々なものを積極的にオンライン化していこうとする今の風潮が怖い。仕事の効率だけ考えれば「直接会うなんて古臭い考えはもう止めようよおじさん」となるのかもしれない。だけど自分はまだ、現場に行かないと感じられない、実際に会わないと共有できないものがあると信じている。

 次に学会で海外に行くことができるのはいつになるのだろうか。毎年のように普通に海外出張していた日々は本当に戻ってくるのだろうか。封じ込めに懸命な国と、それを諦めたように見える国がある中で、自由に国を行き来できる日が来ることは当面ないように思う。今後しばらくは、学会(特に国際学会)もオンラインでの開催が中心になるだろう。それは仕方が無いことだと思う。学会が無くなってしまうよりはオンラインでもやったほうが良い。心配なのはそのあとのみんなの反応だ。「やっぱり直接会ってやるのがいいよね」となるのか「オンライン最高!もうずっとこれでいいじゃん」となるのか。後者だとすれば、変わらなければならないのは自分だ。