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湖で微生物の研究してます

科学技術予測調査を読んで

文部科学省直轄の「科学技術・学術政策研究所(NISTEP)」が第10回科学技術予測調査の結果を公表。

5年に1度くらいの頻度で出される国の科学技術の未来予想図であり、研究者として1読をしておく価値はあると思う。以前、勤めていた会社では、こういう国の調査のお手伝いをする仕事が多かったのだけど、このような報告書は、以後の様々な政策や意思決定の議論に引用され、拠り所となる資料になるので、単に「未来を予想する」という意味合いだけでなく、「未来を描く」という側面もある。端的に言えば、ここに書かれているようなことは、予算が付きやすい(予算をつけるための説明がしやすい)、今後注視すべき分野であるということだ。

とても長い報告書なので、全てに目を通せてはいないけど、「生態系」「環境」あたりのキーワードで検索してくると、自分がやっている研究に関係しそうなところが引っかかってくる。テーマ別に章立てされているのだけど、8つのテーマのうち、以下の3テーマについては特に関係がありそうなので、以下、図の部分だけ報告書から引用。

①食と地域資源

 

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②レジリエントな社会インフラ

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③持続可能な未来構築に貢献するエネルギー・環境・資源

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(引用おわり)

ざっと読みだけど、生態学が役に立てそうな場として、以下のようなとこがキーワードなのかな、という感想。

  • 食品生産の効率化・持続化・高付加価値化・予測(長期・短期とも)
  • 自然資源の価値の定量化・市場経済的手法の開発
  • 生態系・気候変動による不確実なリスクの回避

細かく見ると、数ある環境問題の中で「アオコ・赤潮回避」が名指しされていたり、「深海環境を再現し生物を大規模に飼育する技術」など個別具体的な内容が載っているところは、議論に加わった人たちの意図を感じてしまったり。

あと面白いなと思ったのは、「地域を支える人材育成」という1枚(上では4枚目)。研究者と観光・医療業界などがコラボして、地域の価値を高めるというのは、実現できると面白い。僕は常々、琵琶湖は本当に研究していてすごいと思う湖だから、滋賀の魅力の一つとしてこのすごさを伝えられれば、と思っている。

あと注目したのは、環境技術のなかで「途上国で実現できる技術・システムの開発」と触れられているところ(上での最後から2枚目)。研究していての実感として、生態学や環境科学の分野でも、分子生物学がどんどん使われるようになって、研究コストは上がる一方だ。お金を使ってどんどん新しいことに挑戦する側に回るのも面白いけど、「既存のものをもっと安く簡単にできる方法を考える」というのも、きちんと需要とマッチすれば、重要な研究テーマになりそうだと感じた。