yokaのblog

湖で微生物の研究してます

切り替えが必要な感じ

 最近仕事のペースが落ちているような気がする。労働時間は長いのだけど、目的意識を持って集中できている時間が少なく、ダラダラと過ごしてしまっていて良くない。

 原因は大きく二つあるように思う。一つは、仕事量が飽和してしまっていて、「どうせ終わらない症候群」に陥ってしまっていることだ。去年の4月に研究の世界に戻ってきて以降、一貫して仕事を増やす方向に働いてきた。色んな学会に出向いて、色んな人に会って、色んなことを始めて、次々と手持ちのプロジェクトを増やしてきた。会社員時代、MAXで15個とかプロジェクトを掛け持っていた時期もあったので、「まだまだいける」の思いで、増やし続けてきた。

 ところが、研究は会社員時代の仕事よりも、1件1件がはるかに重くて、ここにきて、今までに撒いてきた種が一斉に発芽を迎え「ちょっとやりすぎたかも」という状況に陥っているのが正直なところだ。仕事は始めることよりも終えることのほうがはるかに大変だ。お世話になっている共同研究先に迷惑をかけるわけにもいかないし、今年度はあまり手を広げず、去年撒いた種を確実に収穫まで持ち込むことに注力したいと思っている。

 で、これだけ仕事が溢れると、常に何かが自分の手元で止まっている状態になってくる。実はこの状態は僕がずっと待ち望んできた状態だった。昨年度は動いている仕事が少なかったので、相手にボールを投げて帰ってくるのを待つしかない時間などが多くストレスだった。今ようやく、「手を動かせば動かすだけ仕事が進む」状況になれた。だが実際、今の自分の心のコントロールのできてなさは想定外だった。というのも、自分のモチベーションを保っていた要素の中に「早く終わらせて楽になりたい」という成分が多分に含まれていて、無限に仕事があふれている現状では「どうせ終わらない」からそのモチベーションが湧いてこない、という思考にスイッチしてしまっているからだ。

 これは完全に自分の心のコントロールミスでしかない。本来であれば、タスクを細かく分解して、1つ1つを片付けて楽になっていくことにモチベーションを見出せばいいだけの話だ。だけどそれが上手くできてない。その理由が、冒頭に書いたもう一つの原因だと思う。それは「研究を終わらせる(論文を出す)までのスパンがあまりに長すぎる」ということだ。

 会社員の頃は、3か月~1年くらいのスパンで、一つのプロジェクトを遂行していく時間感覚で働いていた。その時間間隔を研究の世界に持ち込んで、ガリガリと研究を進める、というのが、僕が当初思い描いていた仕事の進め方だった。そこで昨年の4月に研究に戻ってきて以降、フルスピードで実験を企画、実行、分析し、全力で論文を書いて、1月中旬には原稿完成までこぎ着けた。このころまでは、素早く仕事を進められている現状と、モチベーションがうまくリンクできていた。ところが、その後英文校閲⇒投稿⇒リジェクト⇒書き直し⇒再投稿⇒リジェクト⇒大幅書き直し⇒で、いま再び英文校閲に文章を投げているところで、大きく出鼻をくじかれ、4月後半現在、まだ成果になっていない。この先、うまく行ったとしても、再投稿⇒マイナーリビジョン⇒修正⇒アクセプト というステップを踏まなくてはならないだろう。第一稿が完成してから、一体何か月費やせばいいのか。

 この、論文投稿における一連の儀式に必要な時間と労力の余りの膨大さが、これまでガリガリと仕事を進めてきたつもりでいた自分の頭の中でのスピード感にマッチしていなかったことが、自分のモチベーションに水を差しているのではないか、というのが今の分析だ。要するに、あまりにも論文を出すプロセスがしんどすぎて、「日々の実験や分析を急ぐことに努力を注いだって、誤差なのでは?」という気持ちが、言い訳的に自分の頭の中で通用してしまっている現状があるのだと思う。

 だけど当たり前だけど、論文投稿プロセスのスピードが遅いからと言って、それが他の仕事のスピードを下げる理由にはならない。そもそも論文投稿というのは、長大な時間がかかるものであり、それは世界中の研究者が不満に思っていることだ*1。最初から、論文投稿でちょうど折り返し地点、くらいを前提に考えておけばよいだけの話だ。気持ちをなんとか切り替えて、去年の今ごろ、フレッシュでやる気満々でスピード感と自信に満ち溢れて研究の世界に戻ってきた頃の自分を思い出して、また頑張ろうと思う。