yokaのblog

琵琶湖で微生物の研究してます

研究者としてのストーリー

 僕が今まで読んだ中で好きな本の1つに、「ストーリーとしての競争戦略」という本がある。経営学の本なんだけど、一言でいうと

外部環境が変わってもゆらぐことのない、論理的で一貫した物語を描き、それを追い続けられるかどうかが、生き残りのポイントである

という論旨だ。たとえばスターバックスは、コーヒーを売るのが最終目的ではなく、「職場でも家庭でもない、第三のくつろげる場所を提供する」という点が一貫した経営のコンセプトになっている。だから、顧客の回転率が悪くなるかもしれないけども、内装をおしゃれにしたり、電源を提供したりして、できるだけくつろいでもらえるような店作りを目指している。同じように、アマゾンは取扱商品や金額を増やすのが最終目的でなく、「人々の購買行動を助ける」というコンセプトが根底にある。だから、目先の売り上げは下がることになるけど、過去に買ったものをもう一度買おうとする客には「あなたはもうそれを買いましたよ」という注意メッセージを出してくれる。どちらも、目先の売上を追いかけるのではなく、長期目線で最初に描いた「目指すべき姿」を忠実に追い続けることで、確固としたブランドと地位を築いてきた例として取り上げられている。

 

 さて、翻って、研究者はどうだろうか。僕は研究者は自営業みたいなもので、経営との共通点も多いのではないかと思っている。研究者にとっても、一貫したストーリーを描くことって大事なんじゃないだろうか。

「なぜ研究者になった?」

「研究で最終的に明らかにしたいものは、一言でいうとなんだろうか?」

「環境が変わっても、変えないでいるべきものはなんだろうか?」

日々を必死に生きていると、目先の予算確保や生き残り競争、次々と登場する新技術に翻弄され、初心を忘れてしまいがちではないか。

 

ここからは考えをまとめるために、自分の話をする。

 僕は元々、海や川で遊ぶのが好きで、そこに棲む生き物の研究がしたくて研究者を目指そうと思い立った。最初は魚みたいな大きな生き物に興味があったけど、学部で色々と学ぶうちに、「小さいくせにたくさんいて、自然の中で無くてはならない役割を果たしていて、しかもその小ささがゆえにまだ研究が進んでいない」というところに面白さを感じ、次第にプランクトンや微生物のほうに興味が移っていった。その興味は今も揺らいでいなくて、目に見えない小さな生き物の生き様や秘密を、最先端の技術が次々と解き明かしていく現場に身を置けることを面白いと思うし、この分野はまだ見ぬ新発見の可能性が大いにあるフィールドだと思っている。

 一方で、ラボで実験をするばかりでなく、フィールドに出て、自然の中から生き物を採ってきたいという気持ちも大事にしたい。もともとの動機である「自然が好きだから研究してみたい」という気持ちは、持ち続けていたいと思う。今後も色んな場所に出向いて、色んな場所の自然を自分の目で見てみたいと思う。

 加えて最近考えるようになったのが、会社員として3年間働いてきた経験の中で強く感じた、科学といえど財源は無限ではなく、需要と供給で成り立っている、という点だ。僕の研究は基礎科学だから、すぐに医療や産業に応用されるようなものではないけれど、研究者の責任として、常に出口は意識してやっていきたいと思っている。僕の研究テーマの中でもとくに、バイオインフォマティックス関連は、比較的医療や産業界のニーズに近い領域だと思うので、きちんとフォローして、世間への還元を意識しながらやっていきたい。

 

まとめると、

・自然が好きという根源欲求
・急速に発展する微生物学のフロンティアに身を置く知的興奮
・研究をさせてくれている「世間」の需要を意識した研究

これらを大切にしながら、フィールド調査~ラボ実験~情報処理の一連の手順に精通した研究者として自立すること、そして、その能力を活かし、フィールドにいるミクロの生物から、最先端の手法や技術を駆使して面白い発見を見つけてきて、世間を驚かせたり、研究の面白さや重要性を世に訴え、新たな研究の潮流を生み出したりすることを、自分の研究で「成し遂げたいこと」の軸になるものとして定めていきたいと思う。

そうして研究者としての自分のストーリーを描くようにすると、やるべきこと/捨てるべきことも絞れてくるし、逆にそこさえぶれなければ、僕は「水域」や「細菌」にこだわらなくても、琵琶湖で今やっている研究を皮切りにしながら、色んな分野に進出していくことも面白そうかも、という考えになったりする。研究者って夢があっていいなぁ。

まぁ、まずは今やっている研究で結果を出すことが先決ですが。